取締法改正でどうなる? 日本における良い大麻、悪い大麻を規定「大麻業界」の今とこれから
厚生労働省の記録によれば、1954年の時点で日本には3万7000軒を超える大麻農家がいたが、現在は20数軒にまで激減している(2021年末)。しかし、神社における神事や鈴緒、横綱の綱、麻織物、たこ糸、弓の弦、和紙、たいまつ、花火の助燃剤、茅葺(かやぶ)き屋根材、お盆のオガラなど、日本文化に欠かせないものとして現在も生産されている。 18年に三重県から認可を受け、神事・伝統用の大麻を生産している株式会社伊勢麻の松本信吾代表は、法改正について次のように話す。 「『規制』から『利用』の道を開いた点については大いに評価しています。同時に、これまでの大麻の規制、啓蒙のでたらめさについては猛省していただきたいですね。これから決まっていく法律の運用ルールが、大麻草の活用の幅を狭めないものになることを強く要望します」 法改正以降も、大麻栽培には都道府県知事が発行する免許が必要だ。しかし、法律の性質が大きく変わったため、各都道府県が改正法をどう運用するか次第で、状況は一変しうる。もしかしたら、かつてのように日本各地に大麻畑が戻ってくるかもしれない。 ■日本でも新たな産業が生まれる? ふたつ目は「産業」だ。大麻は、世界的な環境意識の高まりとともに、大量の水や農薬を必要とせずに短期間で大きく成長する植物資源として注目を集めている。 多くの国ではTHC濃度が一定基準以下の品種(イギリスでは0.2%以下、欧州、カナダ、米国、中国は0.3%以下、オーストラリア、スイス、タイは1.0%以下)が「ヘンプ」と定義されている。 日本はこれまで、成熟した茎と種子を合法、花や葉などのその他の部分を違法と、部位によって規制していた。しかし、昨年の法改正でようやく成分での規制に変更されることなった(数値は今後決定されるが、0.2%もしくは0.3%が有力)。 実はヘンプ製品は、すでに国内でも多く流通している。繊維としてはリーバイスやパタゴニア、無印良品などでも取り扱われている。さらには、スーパーフードとして注目を集めるヘンプの種子(ヘンプシード。七味唐辛子にも含まれている)や、近年人気のCBD(カンナビジオール)製品もこの産業分野に含まれる。 これまでは海外から輸入する原材料に頼っていたが、栽培免許を取得できれば日本でもヘンプの栽培が可能になる。これによって新たな製品・サービスと市場が生まれ、休耕地活用や地方創生といった動きにつながる可能性は大きい。