広い庭で野菜を育て、週末は温泉三昧…〈年金月35万円・退職金3,000万円〉の60代共働き夫婦、定年後に憧れの〈田舎暮らし〉を実現するも、「1日も早く引っ越したい」切実事情【CFPの助言】
憧れの暮らしを手放すことに…ライフプランの立て直しが必要
退職金を手にしたことをきっかけに地方移住を決心するシニア世代は増えていますが、調査・情報不足により、憧れの暮らしをあきらめざるを得なくなる人も一定数いるようです。 順調に見えた石河さんの田舎暮らしも、想定外の出来事が重なったことで心身ともに疲弊してしまい、住みなれた場所へ戻る決心をしました。石河さんには預金と十分な年金があったため、取りあえずの生活は成り立っていますが、一生、家賃を払い続けるとなると不安は残ります。 多くの場合、老後の生活費の大部分を年金でまかなうことになります。共働き夫婦の場合、年金が潤沢にあることが強みであることは間違いありませんが、夫婦のどちらかが亡くなったときに遺族厚生年金が満額支給されないことによる収入減に直面する懸念があります。 石河さんは、そのことも念頭において、今後のライフプランを立て直していく必要があるでしょう。
デュアルライフで無理なく田舎暮らしをスタート
ここからは、田舎暮らしを考える場合の一般論です。 生活費を下げる目的で都心から地方への移住を希望する人もいますが、移住先によっては、生活費がさほど下がらないケースがあります。 移住後の生活費の内訳は、食費こそ減少しているものの、通信費、日用品費は移住前と同程度、逆に、地域によっては水道代が移住前より高くなったり、交通費(ガソリン代)が増えてしまったりするからです。 また、移住後の暮らしの満足度という観点でいうと、生まれ育った地域でない、ゆかりのない場所を移住先に選ぶ「Iターン型移住」の場合、満足度が低くなるというデータが出ています。地域の特性を知らないまま移住してしまうことが主な要因のようです。 特にシニア世代では、移動手段の確保、医療や介護へのアクセスの悪さは、QOLの低下につながります。 そこで、「田舎暮らしをしてみたい」と思ったら、いきなり完全移住をするのではなく、その地で本当に暮らしていけるのか、まずはお試し期間を設けてみるといいかもしれません。 ただ、生活拠点が2つになれば、固定費や維持費が増えて経済的負担が増すことがネックになります。しかし、持ち家を賃貸に出して賃料を得ながら地方暮らしをするなど、工夫次第で負担を軽減することもできるでしょう。移住・住みかえ支援機構のマイホーム借上げ制度の利用も、選択肢のひとつです。 「完全移住」ではなく「ゆる移住」から田舎暮らしを始め、地方暮らしがライフラインを含め肌に合うと判断すれば、完全移住に踏み切っても遅くはありません。もし違うと思えば、戻る選択もできる、デュアルライフを検討してみてもいいかもしれません。 セカンドライフのスタートは、資産の棚卸と家計の見直しをする良い機会です。不安がある場合は、専門家への相談を検討しましょう。 〈参考〉 ・ パーソル総合研究所 「地方移住に関する実態調査」(Phase1) ・ 「地方移住」で気になるお金の話 ・ 移住・住みかえ支援機構 山﨑 裕佳子 FP事務所MIRAI 代表
山﨑 裕佳子
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