夏の温泉、いと涼し──2024年開業の温泉・温浴付き宿5選
うだるような暑さの夏にこそ、心身をリフレッシュできる温泉旅行に出かけたい。2024年に新たにオープンした、最新設備と極上の湯が融合した温泉・温浴付きの宿を厳選してピックアップした。 【写真を見る】今年の夏に行きたい、温泉&温浴施設をチェック!
■318本の木々が織りなす空間 「那須 無垢の音」は、2024年4月、那須塩原にオープンした宿泊施設。3万5000平方メートルを超える広大な自然の中に、1棟ごとにわかれたスイートヴィラ15室と、フランスの星付きレストランなどで修行した千葉拓海シェフ監修のフレンチを提供するオーベルジュだ。 客室は、無垢材を使用した約68㎡の室内と、約14㎡のオープンエアリビングバルコニーからなる自然と調和した贅沢なデザインで、全室に半露天風呂を備えている。施設のすべての蛇口から出る水は、那須の天然水を地下水脈からくみ上げて使用。純度が高くミネラルを多く含んだ那須連山のピュアウォーターは、やさしい肌ざわりの温泉だ。 施設内最大の特徴は、建築家の石上純也によって設計された「水庭」だろう。自然の森のように見える景色は、じつは318本の木々を植樹して作られた作品。雄大なランドスケープは、さながら、那須の自然を描いた大きな絵画に入り込んだようだ。五感を満たす贅沢なひとときを過ごせるこの空間は、夏の暑さを忘れさせる理想的な避暑地となるだろう。 ■那須 無垢の音 住所:栃木県那須郡那須町高久乙2294-3 電話番号:0287-73-8122 URL:https://mukunone.jp/ ■1500年の歴史を持つ名湯で湯治体験 「界 秋保」は、2024年4月、仙台市の秋保温泉に誕生した星野リゾートの新たな温泉旅館。宮城県奥州三名湯のひとつに数えられる秋保温泉の中でも奥まった静かな地にあり、名取川に沿って佇む。 客室は全49室で、仙台ガラスのアートや、白石和紙を用いた部屋番号の札など、宮城の要素をちりばめた空間と、名取川を臨みる大きな窓が特徴だ。館内には、敷地内の2本の源泉を引いた自家源泉かけ流しの「あつ湯」と「ぬる湯」のほか、渓流の音や自然の風を感じられる足湯に加え、岩組みの屋外露天風呂もある。泉質はナトリウム・カルシウムを多く含み、温泉からあがったあとも、しっとりとした肌が続く。また、抗菌作用のあるメタほう酸と肌のバリア機能を向上させる作用のあるメタけい酸を豊富に含み、カルシウムとの相乗効果で肌荒れを抑える美肌の湯であることも特徴だ。 館内には、地元の食材を活かした季節の会席料理を楽しめるダイニングも完備。宮城県の郷土料理「芋煮」や名物の牛タンが供されるほか、江戸時代の大名の食事をイメージした脚付きのお膳を使用するなど、遊びごころも満載だ。さらに、仙台ゆかりの演奏家による和洋楽器の演奏会や、湯守りによる秋保温泉の歴史や泉質、効果的な入浴法の説明など、地域の文化を体験できるプログラムも用意されている。 豊かな自然に囲まれた秋保渓谷を望む絶景と、1500年以上の歴史を誇る名湯を堪能できるエンターテインメント満載のリトリート施設として人気だ。 ■界 秋保 住所:宮城県仙台市太白区秋保町湯元平倉1番地 電話番号:050-3134-8092 URL:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiakiu/ ■地元愛によって再建した「松籟荘」 2024年4月に新規オープンした「松籟荘(しょうらいそう)」は、全5室の隠れ家的温泉宿だ。前身の旅館は、国の登録有形文化財に指定され、湯田中温泉郷の地域のシンボルとして親しまれていたが、2021年2月に火災に見舞われ焼失。しかし、地元の人々や常連客の熱意に後押しされ、一部クラウドファンディングによる資金で再建を果たした。 全客室には自家源泉である天然温泉かけ流しの露天風呂と、四季折々の景色を楽しむ事ができる坪庭を設け、自然と一体になる日本の建築美を意識した数寄屋建築にこだわった。宿の外にはよろづや本館があり、外湯として5種類の風呂が付設する。なかでも、1階に位置する桃山風呂は、国の登録有形文化財に指定された文化遺産だ。泉質はナトリウム塩化物・硫酸塩温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)を主とした、無色透明でサラリとした温泉だが、保湿効果が高い。さらに、よろづや本館の隣には、湯田中温泉の「大湯」もある。 料理は、英・日本国大使館の大使専属料理人や三菱開東閣の和食料理長を務めた井上邦彦料理長による、地元の食材を活かした創作和食が中心だ。長野県産の信州牛や地元の野菜、山菜などを使用し、四季折々の味覚を楽しめる。館内のラウンジでは、信州産のりんごジュースや、夜にはアルコールもフリーフローで楽しむことができる。 歴史ある建築美と現代的な快適さを融合させ、日本の温泉文化を体験できる贅沢な隠れ家として生まれ変わった松籟荘。地域の人々の想いが詰まった宿で、心身ともに癒される特別な時間を過ごせるだろう。 ■松籟荘 住所:長野県下高井郡山ノ内町平穏3071-1 電話番号:0269-33-2114 URL:https://shoraiso.com/ ■都会で楽しむ温浴リトリート 2024年8月、大阪の梅田駅から徒歩10分圏内に開業する「フォーシーズンズホテル大阪」。日本国内4軒目となるフォーシーズンズホテルは、同ブランド初の畳敷きの客室など、和の要素を多く取り入れたデザインが特徴だ。 温浴施設は、ホテルが内包された超高層複合ビル「ONE DOJIMA」の36階に位置する。大阪の街並みを一望できる大風呂にくわえ、大阪に根付く銭湯文化に着想を得た薬草風呂「季節の湯」が楽しめる貸し切りのプライベート浴室も備える。夏(6月~8月)はワハッカ、冬(12月~2月)は柚子など、四季の自然のリズムと調和するような体験を提供する。また、全175室の客室にも浴槽を設け、すべての宿泊者に多彩な風呂体験を提供する。 ビジネスと観光の中心地に位置しながら、静寂と贅沢さを兼ね備えたフォーシーズンズホテル大阪は、忙しい日常から離れ、心身ともにリラックスした特別な時間を提供する。大阪の新たな名所になることは間違いない。 ■フォーシーズンズホテル大阪 住所:大阪府大阪市北区堂島2丁目4番32号 電話番号:06-6676-8682 URL:https://www.fourseasons.com/jp/osaka/ ■箱根温泉と創作イタリアンでリセット 「nol hakonemyojindai」は、前身の会員制ホテル「東急ハーヴェストクラブ箱根明神平」を改装し、国内2軒目となる「nol」ブランドとして、2024年5月にリブランドオープンした。箱根の中でも閑静な宮城野エリアの別荘地内に位置しており、自然と静寂に包まれた空間だ。 「箱根ウェルネス」をテーマにした施設内には、四季折々の箱根の景色を眺めながら入浴を楽しむことができる大浴場と露天風呂がある。大浴場は、広々とした和モダンなつくりで、ドライサウナも併設する。一方、露天風呂は岩造りで、自然との一体感が味わえる。温泉は、箱根十七湯のひとつである宮城野温泉を自家源泉から引湯。泉質は、アルカリ性単純温泉で、肌にやさしく、美肌効果が高い。また、全39室の客室のうち、15室に温泉露天風呂が付いている。 ダイニングは、ニューヨークのフレンチレストラン「Jean-Georges」本店で、日本人初のスーシェフを務めた米澤文雄が監修した海の幸や近郊牧場の肉類を取り入れた創作イタリアンが中心だ。「心と身体をととのえる」をコンセプトに、自分好みに選べる前菜や、地元の新鮮な野菜を多く取り入れたメニューで健康的な食事を提供する。また施設内には、ゆったりとくつろげるラウンジスペースも設けられている。大きな窓からは箱根の豊かな自然を一望でき、季節ごとに変化する景色を楽しみながら、読書や軽い飲み物を楽しむことができる。 「nol hakonemyojindai」は、温泉とウェルネスを融合させた新しい形の箱根滞在を提案している。都会の喧騒から離れ、四季折々の自然に囲まれた環境で心身をリセットしたい人にとって、贅沢なリトリート体験となるだろう。 ■nol hakone myojindai 住所:神奈川県足柄下郡箱根町宮城野1488番 電話番号:0460-87-2034 URL:https://www.nolhotels.com/hakone-myojindai/
文・松村亜希 編集・岩田桂視(GQ)