“ポスト真央”が続々の熱い女子フィギュア中学生世代
長野市で行われていた全国中学校スケート大会女子フィギュアで、昨年12月の全日本選手権で3位に入り、“ポスト浅田真央”として旋風を巻き起こした東京・日本橋女学館中2年の樋口新葉が、総合174・18点の高得点で見事初優勝を飾った。 2位(167・10点)は同じく昨年の全日本で6位と健闘した坂本花織(神戸市立渚中2年)。3位(165・08点)は同9位の三原舞依(神戸市立飛松中3年)。3人はいずれも、全日本選手権一ケタ順位入りという実力をあらためて発揮した形だ。 さらに今大会では、超高難度のコンビネーションジャンプを成功させたフリープログラムで樋口を上回る114・06点を叩き出し、総合163・21点で4位になった青木祐奈(神奈川県富岡中1年)が強烈なインパクトを残した。 中学生の大会としては異例の36社、100人近い報道陣が詰め掛けた女子フィギュア。平昌五輪の代表争いにも名乗りを上げている女子中学生たちが熱い。
初優勝に輝いた樋口は、もはや貫禄勝ちとも言えるような演技だった。SP首位で迎えたフリーの演技。冒頭に入れる予定だった「3回転ルッツ+3回転トゥーループ」のコンビネーションジャンプが3回転ルッツ単独になってしまったが、その後の巻き返しが圧巻だった。 滑りながら、演技後半のジャンプ構成を変えることを決断。「3回転ルッツ+3回転トゥーループ+2回転トゥーループ」という3連続コンビネーションジャンプに挑み、大成功させてみせた。これには指導する岡島功治コーチも「3回転+3回転にするとは思ったが、それに2回転までつけてしまうとは…」と思わず脱帽するほどだった。 冒頭のコンビネーションジャンプが単独になってしまい、後半でリカバーするというのは、昨年12月の全日本のフリーでも経験済みだが、今回はさらに「+2回転」で基礎点が大幅をアップさせた。機転を利かせた滑りでミスの影響を最小限にとどめるどころか、ミスを補ってあまりある点を稼いだのだから心憎い。 「失敗しても焦らないようにということを1年間練習してきて、その成果が出たと思う。全中で優勝できて良かった。自分の気持ち的にも成長できた」。1月に14歳になったばかりの樋口が、淡々とした口調の中に喜びをにじませた。俄然注目を浴びるようになってからのプレッシャーは相当なものだろう。だが、それを乗り越えるメンタルの強さがある。 一方で、中学生年代の戦いをさらにヒートアップさせたのは中1の青木だ。「ジュニア」の下である「ノービス」の今季全日本チャンピオン。まだ幼さの残る顔立ちながら、ジャンプは高くしなやかで、勢いもあり、文字通りの「武器」。 とりわけ凄いのが、フリーの冒頭に組み込んでいる「3回転ルッツ+3回転ループ」という超高難度のコンビネーションジャンプだ。世界でもソチ五輪金メダリストのアデリナ・ソトニコワ(ロシア)と青木の2人しか取り入れていないという高難度ジャンプ。元々「ループジャンプが得意だった」という青木は、かつて羽生結弦を指導していた都築章一郎コーチの勧めでこの組み合わせにトライしてみると、さほど時間をかけずに習得に成功。今回は完璧な出来映えだった。 「あこがれは荒川(静香)さん。ジャンプのお手本にしているのは羽生さん。今は表現力を磨くために、バレエにも週2回、通っている」と、実に意欲的な青木。SPでの失敗がなければ樋口をも脅かすような高得点を出していたかもしれない。樋口は「中学生にも上手な選手がもっといるから、浮かれていないでしっかりやらないといけない」と気を引き締めている。