年収と手取りの違いとは?手取りの計算方法や、収入アップのコツを解説【社労士監修】
年収や手取り関してよくあるQ&A
年収や手取りに関して、ビジネスパーソンからよく聞かれる疑問についてお答えしましょう。 ◆Q.通勤手当は年収に含まれますか? 一般的に、会社から支給される通勤手当(交通費)は年収に含まれないとされています。電車やバスなどの交通機関、または有料道路を使って自動車で通勤する人に対して、支給される通勤手当については、月15万円までであれば、所得税の課税対象とはなりません。 一方、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、上述した「標準報酬月額」で定める等級に応じて保険料が決まりますが、この標準報酬月額には通勤手当を給与として含めることになっています。従って社会保険の算出においては、通勤手当は年収として扱われています。 ◆Q.賞与は年収に含まれますか? 年収とは、会社から1年間に支払われたお金の総額を指すため、賞与も年収に含まれます。ただし、毎月の給与と違って賞与には法的な支払い義務がないため、最初から賞与がない企業もあります。 また、賞与の支給を前提としていない「年俸制」の企業では、年間を通して支払う給与額を定めて雇用契約をするため、賞与分が月給に含まれていることが多いようです。 ◆Q.健康保険料の負担は転職しても同じですか? 社員が負担する健康保険料は、会社が加入する健康保険によって異なります。 協会けんぽ(全国健康保険協会が運営)に加入している企業であれば、保険料率は10%前後、被保険者負担はその半分の5%前後と大きく変わりません。 一方、組合健保(各企業や業界の保険組合が運営)の場合、保険料率は組合の実情に応じて3~13%の範囲内で独自に決められます。被保険者が負担する保険料率も健保組合によってさまざまですが、協会けんぽより低く抑えられていることが多いようです。 例えば「関東ITソフトウェア健康保険組合」の場合、一般保険料率は4.25%。平均報酬月額380,000円・賞与2カ月分で試算した場合、協会けんぽよりも年額で39,900円負担が少なくなっています(※)。 (※)出典:関東ITソフトウェア健康保険組合「ITS加入のメリット」 ◆Q.転職活動で希望給与を聞かれたら、手取りと額面どちらを答える? 応募企業との給与交渉は、基本的に額面給与での話し合いとなります。希望する金額を聞かれた場合、残業代やインセンティブなども含めた、天引き前の額面年収で伝えましょう。 また「現在の年収は?」と聞かれた場合も、必ず額面で答えます。もし手取りの希望を伝えてしまうと、相手は額面給与と解釈して、低い金額でオファーされてしまうことも考えられるので注意しましょう。 ◆Q.転職活動で年収を見るときの注意点は? 転職先の想定収入の内訳について、賞与や手当、インセンティブなどがどの程度含まれているかに注意が必要です。特に賞与は、前年度の実績で想定されることが多いですが、会社の業績で大きく変わることもあります。さらに入社時期によっては賞与の評価期間外となるため、提示された年収より実際の年収が下がってしまうケースもあるでしょう。 また、想定月収が提示された場合に「みなし残業代」として一定額が含まれていると、期待したほど手当がつかず、結果的に年収がダウンする可能性もあります。提示された給与の内容については採用担当者によく確認するといいでしょう。
【岡 佳伸(おか よしのぶ)氏 プロフィール】 社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
取材・文・編集:鈴木恵美子