「これ以上散歩はできません」多頭飼育現場から救出された秋田犬が譲渡先から戻った理由
つなぐだけじゃない、里親マッチングの難しさ
「もちろん気持ちはわかります。でも、せっかくつながった命、最後まで責任を持ちたいと思っています」 こうして、ハクは預かりさん──Nさんの元に戻ることになり、その後すぐNさんから、「私が散歩着に着替えたら大はしゃぎ! ハクは家の中もお散歩コースもちゃんと覚えていました。ぜひうちの仔にしたいです」と申し出があった。 Nさんは、ハクの里親になる決意をした理由について、こう振り返る。 「里親宅では、すごくおとなしいと言われていて、落ち着いたのかなと思っていましたが、戻って来た時、うちのことをよく覚えていてすごく喜んでくれたのが印象的でした。 それと、あちこち住処が変わるのは臆病なハクにとって負担になるのではないかと考えました。 ハクにとって何がいちばんいいのかはわかりません。ただ、人が少し苦手で、海や山へのお散歩をすごく楽しみにしている仔なので、うちのような田舎で暮らすのもいいのかなって」(Nさん) 坂上さんを通して、里親となったNさんから、現在のハクの様子も教えてもらった。 「やんちゃだけど、素直でとてもお利口です。今は、海岸を走り回り、先住犬たちのそばにくっついて昼寝し、時々は私と一緒に会社に出かけて──という日々を送っています。 満面の笑顔が本当に幸せそうです!」(Nさん) 「一度、里親に出した動物を、返還してもらったのはワタデキでは初めてのケースです。何がハクにとって、また、里親さんにとってのベストなのか悩みに悩みましたが、やはりこの結論で良かったと、今のハクの様子を見て確信しました。 同時に、譲渡の難しさをあらためて感じています。今回については、社交的で遊び好きな若い先住犬のいるおうちが向いていたのかなあとも思います」 ハクの里親となったNさんは、2022年9月にワタデキが引き出した猫「やー」についても、ハク同様に預かりボランティアを担当し、1年後に里親になっている。 Nさんの家でリラックスできるようになったハクに、やーがちょっかいを出す姿がたまらなくかわいいのだという。 最後に坂上さんはこう、言い添えた。「次回は、やーのこと、そして、ミルクボランティアについてお話させてください」。
坂上 知枝 長谷川 あや