「これ以上散歩はできません」多頭飼育現場から救出された秋田犬が譲渡先から戻った理由
「これ以上の散歩は無理です」
譲渡当日、預かりさんは、手作りのおやつを大量に持参し、ハクを里親さん宅に連れていき、その後、みんなで一緒にお散歩し、「預かりさんと私は、ハクに気づかれないようにそーっと帰りました」。 無事、譲渡が終わり、ひと安心したが、思わぬ事態が起こる。 ハクの里親となったのは、「預かりさんの知り合いの、40代の女性とその弟さん、もうすぐ80歳になる、彼らのご両親の4人家族」だった。 「ご両親、特にお母さまがハクを気に入り、引き取りを希望されたのですが、80歳を迎えるご両親が中心に散歩をすると聞き、少し不安を感じました。 『これからまだまだ成長する大型犬ですし、都会の音に完全には慣れていません。びっくりすると強く引くこともあるので、ハクのような若い大型犬ではなく、シニアに近い落ち着いた中型犬のほうがいいのでは?』とお話しすると、『いえ。お散歩は私と弟で行くようにするので大丈夫です』と。 ハクはまだ育ち盛り。里親さんは、海岸まで行ってたくさん走らせ、社会性を身に付けるために、ドッグランにも積極的に連れて行ってくれていたので、自由運動を含む充分な散歩量を望んでいる旨をお話すると、『はい。全て問題ないです!』とのことで引き受けていただくことにしました」 しかし4カ月後、散歩は足の悪いお母さまがメインに行っており、1日40分程度しか行っていなかったことが発覚する。坂上さんと預かりさんが里親に状況を尋ねると、「これ以上の散歩は無理です」とのことで、坂上さんは返還してもらうことを決意する。 「譲渡した時に21キロだったハクの体重は、返還時には25キロになっていました。このサイズで朝15分、夕方25分のお散歩時間は、決して充分とはいえません。それ以上に心配だったのは、はたして数年後、80代のお母さまが散歩に行けるのかということでした」 返還してもらう時、里親さんから、「本当にかわいがっていたのに」「動物支援団体のイメージが変わった」などと言われたという。