さよなら、リーリーとシンシン…日本人に幸せくれた夫婦との「お別れ」は150分待ち
辛酸なめ子のじわじわ時事ワード【リーリーとシンシン】
パンダのシャンシャンが中国に帰ってしまった寂しさがさめやらぬうち、青天の霹靂の知らせが。シャンシャンの両親、リーリーとシンシンも急きょ中国に帰ることに。自然交配で4頭ものパンダを誕生させた2頭がいなくなってしまうとは。もう新たなパンダが生まれることもありません。 【イラスト】大谷翔平選手の妻・真美子さんが持つバッグの抜群の宣伝効果はエルメス「バーキン」並み？ 2頭とも高血圧の症状が出ていて、生まれ故郷で治療するのが望ましいということになったようです。さらに2年後には、残る双子のシャオシャオとレイレイも返還されるので、上野動物園からトップスターであるパンダがいなくなるという直視したくない現実が。 発表後、動物園はどんな空気なのか……パンダたちが暮らす西園の飼育展示施設「パンダのもり」に平日午前に訪れてみました。道すがら、男子中学生のグループが「あっパンダ？ 違うか」と一瞬見間違えたのは、白と黒の柄のジェフロイクモザルでした。やはりパンダの穴を埋めてくれる動物は他にいなそうです。 西園への橋には、リーリーとシンシンの歴史を振り返る展示が。2011年に来園し、愛称決定。公開開始で押し寄せる人々の視線を浴びる2頭。でも、2頭だけになると夫婦のスキンシップが芽生えます。最初に生まれた赤ちゃんが死んでしまう悲しみを乗り越え、その後3頭のパンダをこの世に送り出しました。震災やコロナ禍などの災厄がふりかかる中、日本人を励ましてくれました。 リーリーとシンシンに会ってお礼を言いたいと思ったら、「150分待ち」の看板を掲げるスタッフが。すいている時間はあるのか聞くと「ずっとこんな感じです」とのこと。敷物を敷いて座って待つ人もいてピクニックのようでした。でも、並んでいる人々はどこか神妙な表情です。平日なので年齢層が高めで女性率が高く、ガラス窓への写り込みを最小限にするために、暑いのに黒い服を着用しているプロの人が多いです。 リーリーとシンシンはあきらめて、待ち時間20分で見られるレイレイの展示スペースへ。両親の面影が残る（素人が見るとほぼ同じ顔ですが）レイレイは、観客にお尻を向けてうんち。そのあとおいしそうに笹を食べていました。健康状態も良く、無邪気な姿にホッとさせられました。 2頭は9月29日に中国に返還。中国ではシャンシャンとも再会。同じ施設で暮らせるそうで、日本人を幸せにする使命を果たしたあとは家族水入らずでゆっくり過ごしてほしいです。
韓国の福宝
韓国にもアイドル的なパンダがいました。その名は福宝（フーバオ）。4月に惜しまれながら中国に返還されましたが、その後、両手を合わせてお辞儀するという姿が中国で撮影され、芸を仕込まれている疑惑が浮上。体調不安説もあり、韓国のファンに心配されています。 かつてパンダがサーカスの一員として2本足で立ったり、バイクに乗ったりといった高度な芸を見せた時代もあったので、やる気を出せば何でもこなせるポテンシャルの持ち主なのかもしれません。返還されたパンダの扱いが変わらないことを願います。（漫画家・コラムニスト、エッセイスト）
