住宅の作りすぎ 「賃貸用」が空き家の半数 富裕層の相続税対策が拍車
◇タワマンは値上がり期待 また、国内では富裕層の数も増加している。野村総合研究所の調査によれば、負債を除く純金融資産で1億円以上保有する世帯数は148万世帯(21年)に達した。高齢の富裕層にとっては、眼前に迫る相続で節税対策をする必要に迫られており、節税対策としてアパートやマンションなどの賃貸住宅を建設・投資する動きが顕著になっているのだ。 現金を1億円所有していれば、額面そのままが課税対象額になるが、賃貸住宅を建設すれば土地部分は路線価評価額(貸家であればさらに貸家建付地評価割合によって減額)、建物部分は固定資産税評価額での評価となり、現金のままに比べて6割程度に評価額を圧縮できるのがポイントだ。アパートローンなどの負債額も相続税評価額から控除でき、相続後は子や孫が賃料収入も確保できる。 賃貸アパートではアパート業者から一定の条件下で賃料保証がつくことが多い。タワーマンション1室ならば資産価値も高く、将来的な値上がりへの期待もある。そうした相続税対策の目的が賃貸住宅所有を後押しし、一層の賃貸住宅供給に拍車を掛けている。しかし、賃貸住宅市場の需要とは直接関係なく供給されるため、結果として賃貸住宅の空き家が増え続ける構図だ。 そして、賃貸住宅空き家をさらに増やしそうなのが、首都圏などの大都市圏で予想される大量相続問題だ。戦後、地方から職を求めて大都市圏に流入した人たちの多くが、70~90代となっている。すでに夫婦のうち片方が亡くなる1次相続が起きているが、これからはもう片方もなくなり、子などが相続人となる2次相続の頻発が予想される。 相続税の申告では1次相続の場合、配偶者には相続税評価額から一律1億6000万円を控除できる「配偶者特別控除」が設けられている。しかし、子などへの2次相続ではそうした特別控除はなく、相続税が課されるケースが激増すると予測される。相続を無事に乗り越えようと、タワマン投資や賃貸アパート建設が今なお続いており、貸家の着工数が勢いを失わない。