「まさに鉄腕」 智辯学園のエース・村上頌樹は春夏合わせて甲子園7試合、921球をひとりで投げ抜いた
「大阪桐蔭戦は『打たれたらどうしよう』って、弱気な気持ちが出たことが一番の反省。子どもの頃から甲子園を見ていて、『大阪桐蔭は強い』『すごいバッターが揃っている』と、勝手に意識を植えつけてしまって、やる前から気持ちで負けていた。あの試合でそこをすごく感じたので、とにかく気持ちを強く持つように意識して、センバツでも『打たれたらどうしよう』ではなく、『やってやろう』『抑えてやろう』って強い気持ちを持って投げました。冬の間、技術や体力が上がったこともありますが、一番は気持ちの持ち方が大きかったと思います」 優勝を果たした2016年春のセンバツは、全5試合、47イニング、669球をひとりで投げ抜き、自責点2。 初戦の福井工大福井戦は10安打を許し、常に走者を背負いながらの投球となったが、気持ちの強さを示し、あと1本を許さず4対0の完封。 つづく鹿児島実戦は1点先制されるも粘り強く投げ続け、7回にチームが逆転し4対1で勝利。準々決勝の滋賀学園戦は、村上が「春のベスピッチ」と振り返る2安打完封勝利。 そして準決勝の龍谷大平安(京都)戦は、1点を追う9回裏に打線が奮起し2対1のサヨナラ勝ち。さらに決勝の高松商業(香川)戦も1対1の延長11回に自らサヨナラ安打を放ち2対1で勝利。2戦連続のサヨナラ勝利で、春夏通じて同校初の日本一に輝いた。 【春夏連覇に挑むも2回戦敗退】 それにしても──8年前、暑さの心配がないセンバツ大会とはいえ、すでに球数問題などが話題になっていたなか、村上は厳しい試合が続いた大会をひとりで投げ抜いた。センバツ前から小坂監督に「全部行くぞ」と言われていたが、言われるまでもなく、そのつもりだったと村上は語っていた。 「自分も全部投げるつもりだったので、監督から言われた時も驚きはなく『わかりました』と。もともと投げるのが大好きで、小学生の時も土日になるとふつうに1日2試合を投げて、ある大会ではチームが勝ち上がるなかで、全10試合をひとりで投げたこともありました。投げるほど球もコントロールもよくなって......センバツの時もそうでした」