ドラゴンといえばブルース・リーじゃなくて「倉田保昭」だよね？ 『闘え！ドラゴン』50周年
「和製ドラゴン」と呼ばれたアクションスター
日本が「カンフーブーム」に沸いた1974年、TVドラマ『闘え！ ドラゴン』（テレビ東京）が放送され、主役・倉田保昭さんのカンフー・空手アクションは子供たちを魅了しました。2024年はドラマの放送から50周年の節目となりました。 【動画】「悪役なの？ カッコよすぎでしょ」これが倉田保昭さん出演の『帰ってきたドラゴン』格闘シーンです 『闘え！ ドラゴン』は、「特撮じゃないけれど特撮みたいな」30分ドラマでした。ドラゴンは変身ヒーローではありませんし、怪獣やUFO、宇宙人も出てきません。当然、ビームやミサイルなども登場しないので派手な爆破シーンもなく、銃撃戦や刃物での斬り合いもほぼありません。素手で戦う最強ヒーローが、主役のドラゴンこと不知火竜馬（倉田保昭さん）でした。 空手の達人「ドラゴン」こと不知火竜馬は香港に降り立ちます。それは、恩師が殺されたという真相を確かめるためでした。待ち受けていたのは暗殺を請け負う殺人組織「シャドウ」です。ドラゴンは「シャドウ」が送り込む武術の刺客達と戦い、組織撲滅を目指すのでした。 番組のターゲットは必然的に子供になったのでしょう。30分ドラマで「ヒーロー 対 悪の組織・怪人」という図式は特撮ヒーローの王道で子供にも分かりやすく、格闘シーンがドラマの半分以上を占め、しかも地上からジャンプしてビルの3階くらいに着地するなど、人間わざとは思えないシーンや、貸し切りロケがしやすい野球場での格闘シーンなど、作品のカラーはほぼ特撮でした。ただ、生身の人間が己の肉体のみで戦う様は特撮を超えた本物のアクションだったと思います。それが、このドラマのすごみでした。
ブルース・リーにヌンチャクを渡した男
ところでなぜ、倉田保昭さんにこのドラマがオファーされたのでしょう。少しご説明します。 1973年12月に、香港・アメリカで大ヒットした映画『燃えよドラゴン』（主演：ブルース・リー）が日本でも公開になり、列島に「カンフーブーム」が到来します。 香港映画界は、71年公開の『ドラゴン危機一髪』の大ヒットから「カンフー映画」がたくさん制作されていました。また、「リー」に続くアクションスター発掘に躍起でした。その候補のひとりが倉田保昭さんでした。 空手、柔道、合気道で段位を持つ倉田さんは、25歳（1971年）のとき、香港の映画会社のオーディションに合格し、活動拠点をアジア（主に香港、台湾）へ移します。「身体能力が高くて動作が速く技の型がきまって見栄えが良い」などと高評価を得て仕事のオファーが絶えず、約3年で少なくとも20本以上の映画に出演して名を上げます。ちなみに、「リー」とは俳優・武闘家として気が合い、親交が深かったそうです。 そして1974年、倉田さんは、敵役を好演した映画『帰ってきたドラゴン』のキャンペーンで日本に凱旋帰国します。ブームに沸くなかで「和製ドラゴン」と呼ばれ、ファンから喝采を浴びました。 この帰国の際、『月光仮面』や『アイアンキング』などの特撮ドラマも手がける「宣行社」からTVドラマのオファーを受け、製作決定したのが『闘え！ ドラゴン』というわけです。 これは裏話ですが、ドラマスタート時の舞台は香港でした。最初にドラマ出演の声をかけられたとき、倉田さんは乗り気ではなかったそうです。そこで条件として、倉田さんは香港在住だったため、「香港でロケをすること」、他にも「俳優仲間のトップスターであるブルース・リャン、ヤン・スエを出演させること」、などの難しい条件を提示しました。 ところが、それらの条件が全て満たされることとなり、引き受けざるを得なくなってしまったそうです。ドラマの後半になると、倉田さんは日本に帰 国したためロケ地も日本に落ち着きました。 ドラマは全26話。なかなか会えない映画のドラゴン「ブルース・リー」よりも、毎週TVで会えるドラゴン、倉田保昭さんは、子供たちの絶対的ヒーローでした。 その後、74年『バーディー大作戦』（TBS）、75年『Gメン‘75』（TBS）と立て続けにドラマレギュラー出演を果たし、過激なアクションシーンを披露。世界を股にかけて数々のドラマ、映画で活躍しました。現在78歳、YouTubeの専門チャンネルでドラゴンは強じんな肉体を披露しています。まだまだ現役です。
石原久稔
