食事は割り勘、日中は照明をつけない!?オランダを擬人化すると倹約家?各国を擬人化した地政学漫画が「わかりやすくておもしろい」【作者に聞く】
世界を「オフィス地球」という会社に見立て、国をそこで働く「サラリーマン」に擬人化した、理央(@br_sss921)さん・沢辺有司さん(原案・監修)の漫画「地政学ボーイズ」。陰キャで趣味人、働きすぎるヒノモト(日本)のまわりには、陽キャで強引なアメリカ、虎視眈々と策略を練る中国、冷酷なロシアなど、各国のイケメン男子が入り乱れる。歴史に基づいた関係性がおもしろく、カジュアルに地政学を学べると評判で「自分も楽しめるし、子どもにも読ませたい!」と反響を得る。今回は第5巻発売(2024年7月19日)に際し、作者に制作のきっかけや見どころを聞いた。 【漫画】国が擬人化!?「地政学ボーイズ」を読む ■陰キャで趣味人、働きすぎな日本、陽キャなアメリカ、真摯なイギリス、ライバル視されている韓国...つながりを擬人化したらわかりやすかった! 島国で他国からの侵略を受けず、建国より独立を保ち続けてきた日本。1853年の黒船来航を期に開国。以降、アメリカとは海洋国家の同盟国である。 アメリカは陽キャでフランクな性格。「俺のことは、アメリックと呼んでくれ」となれなれしい。ヒノモト(日本)に対して企画の意見を求めてくるが、「意見は聞くだけ」。アメリックは「常に自分が正しい」というスタンスで、意見を曲げることはない。 強者であるアメリカの圧は強めで、NOと言えない日本は、日米貿易交渉で「牛肉、チーズ、ワイン、豚肉」など、アメリカの輸出物を多く扱うことになった。このような歴史的背景が漫画のなかでわかりやすく描かれている。 イエスマンのヒノモトを従え、アメリックは「オフィス地球」での権威を強いものにしたい。そんな彼がマークしておきたいのは、ロシアと中国。アメリックは、ヒノモトの席が近い両国の動向にも目を光らせていた。諸国からケンカを売られると、アメリックがすかさず防御(米軍)。 国を擬人化し、「地政学」という観点で描いたのが、本作「地政学ボーイズ」だ。歴史的背景の裏側もカジュアルな会話で構成されており、各国との関係性がわかりやすく描かれている。 ■第5巻は南蛮渡来で友好を深めた「オランダ君!」身長195センチで好きな花はチューリップ。ケチ...もとい、堅実な人柄に迫る!? 5巻の試し読みとしてXに投稿されたオランダ編には、3.6万いいねがつく。オランダの正式名称「ネーデルランド」についてや、食事は割り勘、日が差すうちは照明はつけない、ガソリン代を節約するため買い物はネット通販、など倹約家なお国柄も性格のベースとなっている。「おもしろくてためになる」「これが教科書だったらもっと歴史の授業好きになってた」などのコメントも届いた。 ――「地政学ボーイズ」の制作の経緯をお聞かせください。 きっかけは、「地政学を題材にした企画があるけど描いてみないか」というお話を編集部からいただいたのが始まりです。恥ずかしながら、「地政学」という分野を知ったのはそのときが初めてでした。いくつか参考文献を送っていただいて、目を通したところ、おもしろそうなジャンルだなと思ったので、そこから企画が始まったという形です。 ――難しい国交問題をわかりやすく、おもしろく紹介しています。制作するうえで気を付けていることはありますか? モチーフにしているものが「実在する国」ですので、作中でどの国を扱うときもリスペクトを忘れず描くことを心掛けています。 ――各国のキャラクターはどのように作られていますか?国の性格がキャラにも反映されている気がしますが、こだわったキャラ、難しかったキャラなどはありますか? 基本的にはわかりやすさ重視でデザインしています。国旗モチーフの小物を身に着けていたりとか。なかでも、主人公であるヒノモト(日本)のデザインはこだわりました。ただのスーツでは地味すぎるので袢纏(はんてん)と簪(かんざし)をつけました。実際のファッションとしてはかなり奇抜なのですが、「和」っぽい雰囲気はだせたのではないかと。 また、性格に関しては、「日本は暗めでおとなしい・アメリカは陽気・イギリスは紳士っぽい」といったように明らかにステレオタイプなのですが、キャラクター数も扱う情報量も多い作品のため、すんなりと受け入れてもらいやすいように、という意図があります。 ――各キャラクター(国)のデスクの位置でビジネスの関係に影響してくるところもおもしろいです。このようなアイデアは、どうやって生まれましたか? 「国」を人に、「世界」をオフィスに置き換え、それぞれの「領土」はどうなるかと考えたときに、それはやはりデスクだろうと。「デスクが近い人とはトラブルが起きがちだったり」みたいなオフィスの人間関係のいざこざを、世界情勢に当てはめて考えてみる、というのがスタート地点でした。 ――5巻が発売となりましたが、こちらの見どころを教えてください。 2023年の出来事やアメリカ大統領選のことなど、わりと直近の出来事について触れているので、最近の情勢について興味のある方には楽しんでいただけるのではないかと思います。あと本編とは関係ないですが、毎回巻末の描き下ろしもしっかり描いていますので、そちらも併せて楽しんでもらえるとうれしいなと思います。 ――ちなみに、理央先生のお気に入りのキャラ(国)はありますか? 描きやすいという意味では、やはり主人公のヒノモトは気に入っています。日本のキャラなのでもっとも動かしやすいというか、感情移入がしやすいというか。あとはアメリカです。シンプルに表情豊かなキャラクターなので、画面映えするなと思っています。 ――最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。 いつも「地政学ボーイズ」を読んでくださりありがとうございます!ありがたいことにファンレターなどをいただける機会も増えまして、いろんな方が読んでくださっているんだなぁと、ひしひしと感じる毎日です。まだまだ未熟と感じることも多いのですが、今後も皆さまに楽しんでいただける作品作りをしていきたいです。応援よろしくお願いします! 取材協力:理央(@br_sss921)