「古巣に恩返し」「地元愛で電撃復帰」…なぜスポーツメディアは「浪花節」報道が大好きなのか?
シビれるセリフ
この手の「浪花節報道」の中に登場する、最上位の有名人といえば長嶋茂雄・巨人終身名誉監督である。1996年オフ、清原和博がFA宣言した際、獲得を目指した長嶋氏は「思いっきり、私の胸に飛び込んできてくれ」と清原に伝えた。同様に獲得を目指していた阪神・吉田義男監督は「(ユニフォームの)縦縞を横縞に変えてでも…」と伝えたが、浪花節道では長嶋監督が上だ。さすがに清原一人のために阪神伝統の縦縞ユニフォームを横縞には変えられないから、ジョークだと捉えられたのでは。ただ、吉田氏もここでは「誠意」と「浪花節」は見せている。 長嶋氏の浪花節道の常連としての真価は後にも明らかになる。2023年6月、元巨人の槙原寛己氏のYouTubeチャンネルのゲストは清原氏。その際に清原氏は、FA移籍の際に長嶋氏から巨人の永久欠番である背番号「3」を巨人入団の条件として提示されていたことを明かした。 そこで清原氏は「日本中を敵に回すようなもの」「3番なんて重すぎて、ノイローゼになって球場に来られなくなる」と述べた。実にアツい浪花節のやり取りではないか! 長嶋氏は1999年オフにもダイエーからFA宣言した当時36歳だった工藤公康に「ジャイアンツで、男の花道を飾ってくれ」とこれまたシビれるセリフを言い、スポーツメディアは大々的に取り上げた。
外国人選手にも浪花節
この「浪花節報道」には、外国人選手も含まれる。阪神で活躍したクレイグ・ブラゼル氏は牛丼が好きだったが、今年日本に来た時も牛丼について語らせ「日本愛」的な表現をする。さらに、中日の絶対的守護神であるライデル・マルティネスについて、RONSPOが報じた内容は感動的である。 キューバ出身のマルティネスは今年度で中日と契約が切れ、金満球団が札束攻勢を仕掛ける、との憶測もある。それに対して、RONSPOは関係者の話としてこう記述する。 〈ソフトバンクに比べると資金力で劣るはずの中日が破格の条件を提示して残留オファーをかけているという。マルティネスが、大方の予想に反して、急転、中日に残留する可能性も十分にあるのだ〉 〈そもそもマルティネスは、当時の森繁和監督に発掘され、2017年から育成契約で育てられたという背景があり、中日には大きな恩がある〉 どうだ! 日本のスポーツメディアの浪花節っぷりは外国人選手をも巻き込むのである。私自身、プロスポーツ選手はより良い契約の場所を見つけて転々とするイメージがあり、温情・義理・人情・人間関係といったところは極力排除するものだという認識があった。だからFCバルセロナのエースだったフィーゴが最大のライバルであるレアル・マドリードに移籍した時にバルササポーターはフィーゴに猛烈なブーイングをかました。