琴桜 1敗守る 亡き北の富士さんへ「恩返しできるよう、いい報告ができるようにやるだけ」
◇大相撲九州場所12日目(2024年11月21日 福岡国際センター) 大相撲の元横綱で人気解説者だった北の富士勝昭(きたのふじ・かつあき、本名竹沢勝昭=たけざわ・かつあき)さんが今月12日に東京都内の病院で死去した。82歳だった。葬儀・告別式は既に近親者によって執り行われ、12月18日に八角部屋でお別れの会が開かれる予定。訃報から一夜明け、北の富士さんと同時代に活躍した元横綱・琴桜の孫、大関・琴桜が関脇・大栄翔を下し1敗を死守。豊昇龍も1敗を守ったが、隆の勝は敗れ、2敗に後退した。 【写真あり】北の富士さん 気配り上手で記者にも女性にも愛された人情の人 最後の塩をつかんだ表情にはいつも以上に気迫がみなぎった。琴桜は、得意の右差しへ持ち込めなかったが、あわてない。相手のお株を奪うように突き放して攻勢した。「対応できたと思います。目の前の一番に集中していけている」。夏場所から3連敗していた大栄翔を押し出した。 前夜、北の富士さんの死去が報じられた。琴桜は「土俵にそういうのは持ち込まない。明日からも変わらず、引き締めていくだけです」。感情は置いてきたはずだったが、自然と力はみなぎった。祖父の元横綱・琴桜は同時代の土俵で戦った仲。幕内で50度、対戦成績は北の富士さんの30勝20敗だった。 師匠で父の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)によれば、北の富士さんは現役引退後、よく佐渡ケ嶽部屋を訪れた。当時師匠だった先代の膝の上で遊ぶ琴桜と稽古を見守ることもあったという。琴桜が新三役に昇進した昨年初場所の解説では「強くなったなぁ」と感心していたという。9月の大関昇進パーティーにも招待した。一度は出席の返事が届き、鏡抜きに加わってもらう予定だったという。 佐渡ケ嶽親方が北の富士さんへ、琴桜のことを「いい意味で頑固。素直。(先代の琴桜と)そっくりです」と伝えると「ああ、そう」とうれしそうにうなずいたという。 琴桜は言った。「恩返しできるよう、いい報告ができるようにやるだけです」。1敗を守り、年間最多勝でもトップの大の里に1差。悲願の初Vに向け、豊昇龍と並走する。残り3日、天国の北の富士さんへ、最高の姿を届けるつもりだ。