妻殺害の罪に問われた元長野県議に懲役19年の判決 長野地裁
長野県塩尻市で2021年に妻を殺害したとして、殺人罪に問われた元長野県議の丸山大輔被告(50)の裁判員裁判で、長野地裁(坂田正史裁判長)は23日、懲役19年(求刑懲役20年)の判決を言い渡した。 起訴内容は、21年9月29日午前1時44分~同3時4分ごろ、酒造会社の事務所を兼ねた自宅で妻の希美(のぞみ)さん(当時47)を窒息死させたというものだった。 直接証拠がない中、検察側は間接証拠を積み重ねて立証した。 議員用宿舎と自宅の間にある6カ所の防犯カメラの鑑定などから、丸山被告が現場に自身の車両で移動したと主張。現場に争った形跡がないことや、床に残された足跡が過去に被告が履いていたテニスシューズと一致することなどから、「被告以外の真犯人がいるという仮説は常識的に成り立たない」と訴えた。 一方、弁護側は「丸山被告は事件当時、長野市の議員用宿舎にいた」として、一貫して無罪を主張していた。 検察側の主張に対し、「間接証拠からも被告が犯人とは証明されていない」と反論。防犯カメラ画像は不鮮明で、運転者の姿や車のナンバーが確認できないだけでなく、そもそも丸山被告の車両との同一性も立証されていないと主張した。 事件前の28日夜には同僚県議と飲酒しているとし、宿舎を他の県議に目撃されることなく出入りし、酔った状態で長距離運転するのは困難だと訴えていた。 丸山被告は公判で「妻の希美を殺害したのは私ではありません」と起訴内容を否認。希美さんについて「頼りになり、感謝も尊敬もしていた」と語っていた。 判決はまず、被告が事件前後に議員用宿舎と現場を往復したとすると、カメラ映像も時刻や車両の方向といった複数の要素がその状況と符合することから、「純然たる仮説にとどまるものではない」と述べた。 さらに、被告は同僚議員との会食を議会質問の原稿作成を理由に中座したが、夜間に原稿に触れていない点に着目。このほか、現場から現金の一部が盗まれた一方、犯人が物色した痕跡や被害者が抵抗した様子がないことや、現場の足跡も一部しか残っていないといった不可解な点は、物盗り犯に見せかけた「犯人の偽装工作と強く推認される」とした。 そのうえで、こうした事実の一つひとつは決め手にはならないものの、そろって「被告が犯人だと推認させる」と指摘。被告が犯人でないとしたら、説明が極めて困難な事実関係などが存在するとして、被告を犯人だと結論づけた。(菅沼遼)
朝日新聞社