食生活に気をつけていても発症する「犬の糖尿病」、原因や治療について獣医師が解説「“多飲多尿”“食べても痩せる”は糖尿病のサイン」
治療はインスリン注射が中心
人間の1型糖尿病に近い犬の糖尿病では、インスリンの効果を外部から補って血糖値をコントロールするという治療法を取る。 「治療は、インスリンの皮下注射が中心です。量や頻度には個体差があるのですが、多くの場合は飼い主さんが1日2回、ご自宅で注射を行うことになると思います。食事をすると、食べた物から体内に糖分が入ってくるので、それを分解するインスリンが必要なんです」 注射は、基本的には生涯にわたって続けることになる。動物病院でインスリン投与の量や頻度を設定したら、なるべく決まった時間に投与すること、食事量や運動量を一定に保つことで、投与したインスリンの効果が適切に得られる。 ◆食後の急激な血糖値の上昇を抑えることでインスリンの投与量を減らすことが可能 なお、食後の急激な血糖値の上昇を抑えることでインスリンの投与量を減らすことが可能という。 「繊維質を多く含み、食事後に急激に血糖値が上昇しないような療法食をかかりつけ医に処方してもらうといいですね」 血糖値のモニタリングには、皮膚表面に貼って皮下間質液のグルコースを測って血糖値を算定するパッチ型の測定器も有効だという。最近は人間向けから派生して犬にも使える便利な商品が増えているようだ。
早期発見のためには定期的な尿検査が有効
自己免疫の異常から起こることが多い犬の糖尿病は、予防が難しい。 「犬の糖尿病は生活習慣病ではないので、予防に努めるというよりは、早期発見に努めて早く治療を開始するのが一番です。飲水量や尿量をチェックする。 あとは定期的な尿検査もいいですね。血液検査となると注射器が苦手な子は大変ですが、尿は飼い主さんでも取りやすいと思います。トイレシートを裏返しておいて表面にたまった尿をスポイトなどで採取するとか、お散歩に採尿用のトレーを持っていくとか。犬の身体に傷をつけずにできる検査なので、おすすめです」 また、避妊手術をすることで、発情による高血糖から糖尿病になるリスクは解消できる。 「逆に糖尿病になった子で、血糖値がなかなかコントロールできないときに避妊手術をすることもあります」 ◆教えてくれたのは:獣医師・鳥海早紀さん 獣医師。山口大学卒業(獣医解剖学研究室)。一般診療で経験を積み、院長も経験。現在は獣医麻酔科担当としてアニコムグループの動物病院で手術麻酔を担当している。 取材・文/赤坂麻実