なぜ長谷部誠は40歳まで第一線でプレーできたのか? 「1試合の総走行距離がすべてを物語るわけではない」
長谷部は「退屈」? 同僚たちの貴重な証言
そういえば「長谷部はlangweiligだ」と誰かが言っていた。40歳になった長谷部に対してチームメイトからのコメントをまとめた動画でチームメイトの一人がそんな風に表現していたのだ。 langweiligは直訳すると「退屈」となる。とはいっても、それはつまらないという意味ではなく、何事にも動じず、浮わつかないという意味合いのほうがしっくりくる。例えばニュルンベルク時代から長年チームメイトの元アメリカ代表ティモティ・チャンドラーがこんなことを言っていた。 「マコトはいつでも100%全力だ。練習もそうだけど、練習前後の準備やケアにも100%なんだ。そうした姿勢が言葉よりも如実に仲間に伝わる。クラブにあるお風呂はもう彼のものだね(笑)」 あるいはこんな逸話がある。 2021-22にフランクフルトはELで優勝を果たした。クラブ史上初の快挙にみんなの喜びは弾けんばかり。試合後は夜通しパーティーモードだったという。フランクフルトへ戻るチャーター便では6つのスピーカーで音楽を鳴らし、ビールを飲んで、みんな叫んでいた。 「そんな中ふと端っこを見たら、マコトが帽子を深くかぶって眠っていたんだよ」(チャンドラー) ブレないにもほどがあるだろとさえ思ってしまう。とはいえ極端なまでに禁欲というわけではない。2021年3月の契約延長記者会見で、フランクフルトで同僚だった元オーストリア代表DFマルティン・ヒンターエッガーが「長谷部は遺伝子レベルから違う」とコメントしていたことを受けて、これほど長く現役でコンスタントにプレーできる秘訣を尋ねられたときにこんなふうに答えている。 「明確なことはわからないけど、一つ、サッカー選手として、人間としてのバランス力かなと思っているところはある。小さいところでいえば食べ物。もちろん僕は食事に気をつけている。家で日本食とか体にいいものを食べるようにはしている。でも僕はお菓子も大好きで、お菓子も食べます。揚げ物も大好きで食べる。でも自分の中でこれ以上は食べないと決めたら食べない。そのバランス感覚かなと思っていますね。トレーニングでも、僕は年齢を重ねるごとにトレーニングは多くやらないと(パフォーマンスが)落ちていってしまうんじゃないかなと思うタイプなので、そこを調整するバランス感覚だったりとか。頭を使って、自分に合った、自分らしさの中でそこを調整できる。しいて挙げるのだとするとそこかなと」