孫正義がカチン「何を考えとんのか、お前は!」→弟に伝授した「不思議な割り算」がめっちゃ参考になる
だが、泰蔵は東大在学中から、ビジネスをはじめていた。23歳のとき、1996年2月にインディゴを設立。インターネットに特化したビジネスを展開することになった。兄が日本ソフトバンクを興したのも23歳。この点では負けていない。 ネット検索のパイオニアである米ヤフーのジェリー・ヤンに会ったのが、直接のきっかけである。 1995年12月、ジェリー・ヤンに会った泰蔵は、ヤフーの日本版ローカライズを成功させる。ジェリー・ヤンの生き方に感銘を受けたことが、会社設立につながった。 孫家には独立自尊の家風がある。 何事も自分で道を切り拓いてゆく。 ゲーム好きな兄の正義は、弟とスーパーマリオ・ブラザーズのゲームをしながら経営哲学を教えた。 キノコはどうやって取るのか。うまくカメを飛び越えていけるか。 そこで、誰かに攻略法を教えてもらったとしよう。ここに土管があり、ワープできるよと教えてもらう。どうしたら、苦労しないで4面にいけるかを教えてもらう。 だが、それではゲームをしていておもしろいだろうか。 1面をクリアし、モンスターを倒し、2面にいく。むずかしくなる。2面からさらに3面に。
ビジネスもスーパーマリオと同じだと兄は言うのだ。1つひとつ、自分で道を拓いてゆくことが大切なのだ。 ● 幕末の革命家から学んだ ビジネスにおける「志」 かつて、中学生のとき、正義と泰蔵は関ヶ原というシミュレーションゲームをしたことがある。石田三成と徳川家康に分かれて戦う戦略ゲームだ。 兄は徹底して攻め立てた。1個の軍勢に対しても6個ぐらいで囲んだ。 弟だからといって容赦はしなかった。 企業の大型買収を行なってきた孫には、攻めのイメージが強い。 だが、孫は大胆にして細心なのである。 「人一倍、手堅いと思います。でも、橋を渡ると決めたらダンプカーで進む」 このことも泰蔵は兄から学んだ。 志定まれば、気盛んなり。 これは幕末の革命家吉田松陰の言葉である。いったん決心がつけば、いかなる困難にも立ち向かっていくことができると松陰は教えた。 ビジネスにおいて、何をめざすのか。 孫の青春時代に培われたもの――それは志であった。 自分の仕事がこれからのデジタル情報社会に貢献するという強い自信、すなわち高い志である。
井上篤夫