日本代表、レクサスLBX vs世界選抜、BMWX2M35ixドライブ 日独の都会が似合うコンパクトSUV対決! どちらにも備わる独自の持ち味とは?
コンパクトSUVもプレミアム路線に突入か?!
「サイズのヒエラルキーを超えたこれまでにないコンパクト・ラグジュアリー」という謳い文句で登場したレクサスLBXはどんなキャラクターを持ったSUVなのか? BMW X2と乗り比べて最新レクサスの立ち位置を考えた。モータージャーナリストの島下泰久がリポートする。 【写真24枚】日本代表、レクサスLBX vs世界選抜、BMWX2M35ixドライブ 日独お洒落なコンパクトSUVの代表2台を写真で比較する ◆グローバルで認められたプレミアム・ブランド 世界で戦う日本車の中でも、とりわけグローバルで認められたプレミアム・ブランドと言えば、レクサスをおいて他にはない。圧倒的な静粛性でライバル達に脅威、そして影響を与えたLSや、プレミアムSUVというカテゴリーの先鞭をつけたRXなど、その歴史はライバルをフォローするのではなく、独自の道を行くことによって切り拓かれてきた。 昨年デビューした新型車、LBXはそんなレクサス初の欧州Bセグメントに属するサイズのコンパクト・クロスオーバーである。世界のライバル達が一層の上級化、高価格化に向かう中、真逆を行くラインナップの拡張の狙いは、レクサス曰く「本物を知る人が素の自分に戻り、気負いなく乗れるクルマ」を作り出すことだったという。 このセグメント、海外勢には真っ向からぶつかるクルマは実は多くなく、ドイツ勢だとアウディQ2、もしくは新型でCセグメント相当までサイズアップしたとは言え、キャラクターとしてはMINIカントリーマン辺りが浮かんでくる程度。BMW X2は、そのMINIカントリーマンとエンジン横置きの基本骨格を共有するクーペSUV、BMW言うところのSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)である。 実際、全長はLBXの4190mmに対してX2が4565mmで、そこだけ見ればクラス違いとも言えるこの2台だが、このページの写真に表れているように、LBXの存在感は決して負けていない。ブランド性、使い勝手の良いサイズ、洒落っ気まで含めて、ここでは比較の対象としてみた次第だ。 ◆LBXの力強い外観 LBXはトヨタ・ヤリスなどと同じGA-Bプラットフォームを使いながらも、大径タイヤを収めるためにフロント・サスペンションを変更してホイールベースまで伸ばしたり、小さなキャビンに対してフェンダーを大きく張り出させるなどなどして、力強く塊感ある外観としている。特にインパクトが大きいのは、“鏡もち”フォルムと称されるリア・ビュー。試乗車は、ソニックカッパーのボディ色に夏の日差しがギラギラと面やエッジを強調していたこともあり、一層艶やかに感じられた。 一方のBMW X2 M35i xDrive Mスポーツは流行りのマット塗装となるフローズン・ポルティマオ・ブルー・メタリックをまとう。チョップド・ルーフのハッチバックという趣だった先代とは異なり、兄貴分であるX4、X6のような正統派SACとなった。全長、全高の拡大は、そのフォルムを成立させるためだろう。おかげで先代は対応していた立体駐車場は、ほぼ諦めなければいけなくなった。 最近のBMWに共通のエッジが強調されたデザインではあるが、線や面はクリーンで、ギョッとさせるような箇所はあまり無い。今のBMWのラインナップの中では、一番広く愛されそうな雰囲気ではないだろうか。少なくとも個人的には現行BMWのベストはこのX2である。 ◆華やかなX2の内装 LBXのインテリアは、エアコンの吹き出し口を内蔵したスリットがダッシュボードから左右ドアまで繋げられ、その下にはステッチ入りの肉厚なレザー風パッドが配されている。繊細なステッチ、上級モデルと同じくeラッチを使って軽やかな所作で開けられるドアなど、仕立ては上質だ。 ドライビング・ポジションは低めで、ステアリングの角度、ペダルとの位置関係も良好。実はLBXのためにプラットフォームの改良まで行なっているのだという。一方、後席は広くはなく、空調の吹き出し口も無し。荷室も容量332リッターとそれなりというところだが、それはLBXが前席の2人のためのクルマと割り切っているからだろう。もっとスペースが必要ならUXもNXもある。 X2のインテリアは一段と華やか。シートだけでなくダッシュボード上面、ドア・トリムにまで合皮とアルカンタラが貼られ、しかも画面サイズは特大。なんとゲームや動画再生なども可能となっている。緻密な作り込み、いかにも今風のハイテクがもたらす満足感は、これも上級モデルと何ら変わらない。 助手席はLBXには設定の無いパワーシート。後席はクーペ・スタイルの外観から想像する以上にちゃんと座れて開放感もあり、空調吹き出し口も備わる。見た目重視のSAVと言えども、乗員全員を快適にもてなそうとしているのがX2なのだ。 その上、荷室は後席使用時の容量は560リッターに達する。兄貴分のX4よりも広いのは、FFプラットフォームの恩恵である。 そんな具合でコンセプトも実際の空間設計も、それぞれ狙いは大きく異なる一方、内外装の仕立てはいずれも立派なものだ。BセグメントだCセグメントだと言っても、サイズは大きくなり価格も上がっているだけに、ユーザーの要求も必然的に高くなっているということだろう。 ◆軽やかなLBX それは走りに関しても同じことが言える。どちらも仕上がりのレベルは高く、乗り較べても感心させられることしきりだったのだ。 まず試したLBXは、とにかく軽やか。サスペンションがしなやかに動き、荒れた路面も苦にすることはないし、その割に直進性も良い。しっかりとしたスタビリティを実感させつつも重々しいわけではなく、コーナーでは適度にロールしながらスーッと滑らかに向きが変わっていく。 先に記したように、LBXはホイールベース延長のために前輪の位置を前進させている。マニアックな話をすれば、そのおかげでキャスター角が寝かされて直進性が高まり、しかも転舵していけばキャンバー角が増えて旋回性が高まるというわけだ。LBXには海外含めこれまで何度も乗っているにもかかわらず、改めていいなあと唸らされた。今のレクサスは、本当にいいクルマを作る。 一方、巷でよくやり玉に挙がるのが1.5リッターエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド・パワートレインのフィーリングだ。3気筒特有の音と振動が、レクサスにふさわしくないという話である。 改めて聞き耳を立ててみたが、低回転域では確かにそれを感じられなくもないが、電気モーターのトルクのおかげで痛痒を覚えることはないし、より上まで回せばほとんど気にならない。むしろ3気筒らしい弾ける感じが心地よく感じられるほどだ。 但し、公平を期すため記しておくと、それは試乗車がオプションのマーク・レヴィンソンのオーディオシステムを装着していたおかげでもある。実はこれにはアクティブ・ノイズ・キャンセリングが含まれるのだ。標準では音も振動ももう少しハッキリ感じられるということは記しておく。 ◆骨太なX2 X2に乗り換えると、骨太なタッチに唸らされた。M35i xDriveの乗り味は硬めだが、ボディの高い剛性感のおかげでガツガツと安っぽく突き上げてきたりはしない。各部の建て付け、パワーステアリングのしっかりとした手応えも含めて、頼りがいのようなものを感じさせる。 ペースを上げていっても、そんな印象は変わらず。ステアリングを切り込むとロールは最小限に曲がっていき、大舵角まで優れた追従性を示す。しかも先代のように代わりに直進がおぼつかないなんてことはなく、どんな場面でも反応は正確。徹頭徹尾ニュートラルなハンドリングは、いかにもBMWらしい快感をもたらしてくれる。 2リッター直4ターボ・エンジンも強力そのもの。全回転域にトルクがギッシリと詰まっていて、刺激的と評したいほどのアクセル・レスポンスを実現している。このダイレクト感には、本来は燃費低減が目的だったに違いないDCTとの組み合わせも効いているのは間違いない。 特にSPORTモードでは反応が更に鋭くなる。トップエンドに向けての伸びの良さ、乾いたサウンドも相まって、まさに内燃エンジンの魅力を思い切り堪能できる仕上がりだ。ゲームや動画もいいが、やはり走ってこそ一番楽しめるクルマである。 思わず饒舌になってしまったが、こちらは最高出力317psの強力なユニット。刺激が一枚も二枚も上手なのは仕方がない。間に合ったならLBXも、先日追加されたMORIZO RRを連れてきたかった。レクサスとして、ちゃんとそういう用意もしているのだ。次の機会には是非お出ましいただこう。 それはともかくとして、走りについては両車、非常に完成度が高いことは間違いない。一方で、味わいはまったく異なる。硬質なX2がいかにもドイツ車、いかにもBMWといった趣なのに対して、LBXはこちらもカチッとしているけれど、タッチはむしろ軽快、しなやか。そう、冒頭に記した「本物を知る人が素の自分に戻り、気負いなく乗れるクルマ」というコンセプトをしっかり具現化しているのである。 それは走りだけでなくデザインやパッケージング、要するにコンセプト自体にも言えることだ。今や単にハードウェアの性能で匹敵しているだけでなく、プレミアム・カーとしての独自の持ち味がしっかり備わっている。世界で存在感を発揮できている理由は、まさにそれだと今回は改めて納得させられたのだ。 文=島下泰久 写真=望月浩彦 ■レクサスLBX 駆動方式 エンジン横置き電気式4輪駆動 全長×全幅×全高 4190×1825×1545mm ホイールベース 2580mm 車両重量 1390kg エンジン 直列3気筒DOHC+モーター 排気量 1490cc 最高出力 91ps/5500rpm+前モーター(94ps)後モーター(6ps) 最大トルク 120Nm/3800~4800rpm+前モーター(185Nm)後モーター(52Nm) 変速機 電気式無段変速 サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル サスペンション 後 ダブルウィッシュボーン/コイル ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク タイヤ 前&後 225/55R18 車両本体価格 486万円 ■BMW X2 M35i xDrive 駆動方式 横置きエンジン4輪駆動 全長×全幅×全高 4565×1845×1575mm ホイールベース 2690mm 車両重量 1710kg エンジン 直列4気筒DOHCターボ 排気量 1998cc 最高出力 317ps/5750rpm 最大トルク 400Nm/2000~4500rpm 変速機 7段自動MT サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル サスペンション 後 マルチリンク/コイル ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク タイヤ 前&後 245/40R20 車両本体価格 810万円 (ENGINE2024年11月号)
ENGINE編集部
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