不思議だらけの「植物のふやし方」。葉をさすだけで根が生えるのはなぜ?
お気に入りの植物をたくさん育てたい、株が弱ったときの保険を兼ねて予備株をつくりたい、花友達と苗の交換をしたいなど、株をふやしたい場面はたくさんあるでしょう。植物をふやす方法のなかでも「さし木」はとくに不思議だらけ。ただの枝から根が生えてきたり、根も芽もない1枚の葉から根と芽が出てきたり。あっと驚く、そんな経験が楽しみに変わります。『NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビDo 花苗をふやす タネまき・さし木・株分け』(著・島田有紀子)から紹介します。
ふやす方法は3つに大別
花苗をふやす方法には、大きく分けて①タネでふやす、②茎や葉、根といった植物体の一部を切り、さしてふやす、③株分けでふやす、の3つの方法に分けられます。タネでふやす方法(①)は、安価でたくさんふやしたいときに便利です。一方、植物の体を使う方法には、さし木(②)、つぎ木、とり木、株分け(③)、球根の分球などがあり、タネからよりもふえる量は少ないながら短い期間でふやすことができます。それぞれに難易とメリット、デメリットがあります。
「さし木」とは?
茎、芽、葉、根など、植物体の一部を切り離して清潔な用土や水などにさし、根や芽を出させて新しい植物をつくる方法全般を指します。切り離した部分を「さし穂」といい、さし穂の部位によって、茎ざし、葉ざし、根ざしがあります。特に、茎を切ってさし、切り口付近から根を出させる茎ざしは、草本植物および木本植物ともに最も一般的なふやし方です。木本植物ではさし木、草本植物ではさし芽とも呼びます。 ※さし木は植物の生育が旺盛なときほど早く発根します。一般に、草花では4月下旬~6月下旬と9月上旬~10月下旬、観葉植物では4月下旬~8月下旬が適期です。ただし、適温が得られる環境であれば年中可能です。
さし木のメリット
【1】親株とまったく同じ植物が得られる タネでふやす場合とは異なり、さし木は親株と同じ遺伝形質が受け継がれるので、親株とまったく同じ姿、形、性質の植物が得られます。いわば分身の術(クローン)。ふやす楽しみの上級編です。同時に、芽や根が新しく更新されるので、株の若返り効果があります。 【2】タネでふやすよりも生育・開花が早い 【3】変異部分をさして新しい植物をつくることもできる 突然変異により生じた変異部分(斑入りなど)を見つけたら、その部分を取り分けてさせば、新しい形質の品種をつくれます。