世界初健常者向けに歩行支援器具を発売 愛知犬山自動車部品メーカーの狙い
自動車部品メーカーの今仙電機製作所(愛知県犬山市)は、電気やモーターを使わず、バネや振り子の動きで脚の振り出しを助ける、健常者向け歩行支援機「aLQ by ACSIVE(アルク・バイ・アクシブ)」=通称・アルク=を開発し、6月から販売を始めた。 健常者が日常生活で使える歩行支援機は世界初で、足腰に不安を持つシニア世代や、その家族などから注目を集めている。今後販売網を全国に広め、階段や坂道の行き来が多い人や、ウオーキングなどで体を動かすことが多い、特に30代以上の人に支援機の活用をアピールしていく。
障害者向け歩行支援機を改良 ばねと振り子の作用で脚を上げる力に
器具は2014年、歩行ロボットの研究を進める名古屋工業大(名古屋市)の佐野明人教授の理論を生かし同社の子会社が開発した障害者向け歩行支援機「ACSIVE(アクシブ)」の技術をベースに、健常者が気軽に使えるように改良したもの。ばねと振り子の作用で歩行時、脚が後方へ行く時に蓄積された力が、踏み出す際に前方へ解放される仕組みで、歩行運動で、自然と脚を上げる力が加わる。ターゲットは高齢者のほか、ウオーキングやハイキングなど運動を楽しむ人たちの疲労低減も狙う。
脚が楽に上がる 階段で快適さ実感 歩行効率20%向上のデータも
筆者が実際に装着してみた。アルクは片足ずつ、ばねなどが入ったユニットをつける。ユニットは腰のベルトにフックで取り付け、ユニットから伸びたアルミパイプにつながるバンドを、脚のももにゆったりと固定する。 歩いてみると、ももがベルトに緩やかに持ち上げられ、脚が楽に上がるような感覚を受けた。機械に操られるような感じはしない。特に階段を上がる際は、未装着時と比べて脚が軽く上がり、快適さを感じた。ユニットの重さは片足分で380グラムと軽量。腕を振っても当たらないほどスリム設計で、使用時に機械が作動するような音もしない。 愛知県三河青い鳥医療療育センターの効果測定データによると、アルクを装着した場合、未装着時と比べて歩幅が2センチ増し、歩行速度も毎秒0.1メートル速くなった。一方、1分間あたりの歩数は0.6歩減少した。つまり、歩幅と速度が向上したことで、歩数減につながったことになる。心拍数や歩行速度のデータを使ってはじき出した歩行効率は、装着で20%向上という結果だった。