医師夫との離婚、財産「1億5000万円」をめぐる攻防 夫は「自分の努力で稼いだ」と分与を拒否
何不自由のない暮らしを送るお金持ちでも、結婚生活が幸せかといえば、そうとは限りません。夫の不倫と暴力に悩み、離婚を考えているという女性から弁護士ドットコムに相談が寄せられています。 女性によると、医者である夫は、財産(1億5000万円)を「自分の努力で稼いだもので、妻の寄与はない」と主張して、女性には「数百万円だけ渡す」と言ってきたそうです。 一般的には、婚姻中に協力して得た財産であれば、離婚に伴う財産分与の割合は夫婦それぞれ「2分の1」にします。 一方で、夫の主張のように、医者のような高額所得者の場合は「2分の1ルール」は適用されないこともあるのでしょうか。 富裕層世帯向けの法務に詳しい岩崎隼人弁護士に聞きました。 「医師の財産分与」にありがちなトラブルとともに、あらかじめ行っておくべき対策も後半に紹介しています。
●2分の1ルールが適用されないケース
――配偶者が医師であれば、財産分与にはいわゆる「2分の1ルール」が適用されないのでしょうか。 「2分の1ルール」は強力なルールです。適用されない可能性はありますが、絶対に適用されないというものではありません。 夫婦が形成した財産を分け合う手続き(財産分与)において、財産形成に対する夫婦の寄与割合が等しいものだと考えて、財産を2分の1ずつ分け合うのが「2分の1ルール」です。 裁判実務では、原則として、このルールが適用されますが、いくつかの例外があります。 「夫婦の一方が特別な資格や能力により財産を築き上げた場合」もその例外の一つです。 この点、注意が必要なのですが、医師のように「特別な資格」が認められるとしても、「2分の1ルール」が必ず修正されてしまう、というものではありません。 2024年5月17日付で成立した民法等の一部を改正する法律でも明文化されているように、原則として寄与割合は「相等しいもの」とされ、それが異なって扱われるのは寄与の程度が異なることが「明らか」であるときです。 医師であることのみをもって、およそどのような世帯であっても寄与の程度が異なることが明らかであるとは言えません。 なお、「2分の1ルール」が修正される場合、その割合は個別具体的な事情によってケースバイケースです。 過去の判例や実務上の経験を踏まえると、おおむね6:4程度となる印象です。95:5になった事案もあるのですが、これは「特別な資格」以外の論点が関係した事例(立証こそ失敗したもののほぼ全ての財産が本来特有財産であると思われるような事例)であり、医師のような「特別な資格」があることだけを理由としてはこういった極端な傾斜がかかることはまずないでしょう。