【公演レポート】望海風斗・甲斐翔真らが家族の変化を力強く描く、ミュージカル「next to normal」本日開幕
ミュージカル「next to normal」が、本日12月6日に東京・シアタークリエで開幕する。これに先駆け昨日5日、公開ゲネプロが行われた。 【舞台写真】ミュージカル「next to normal」より、望海風斗演じるダイアナ。 音楽をトム・キット、脚本・歌詞をブライアン・ヨーキーが手がける本作は、双極性障害を持つ母を中心とした4人家族の物語。日本では2013年、2022年に上演された。今回の上演では、2022年公演に続いて上田一豪が演出、小林香が訳詞を担当。母ダイアナ役の望海風斗、息子ゲイブ役の甲斐翔真、父ダン役の渡辺大輔が続投し、新たに娘ナタリー役で小向なる、ナタリーのクラスメート・ヘンリー役で吉高志音、ドクター・マッデン役で中河内雅貴が参加する。 舞台上には、屋根をかたどったフレームが存在感を放つ、2階建ての一軒家を模した舞台装置がそびえ立ち、本作が家族の物語であることを観客に印象付けた。明転するとそこは朝4時のダイニングで、ダイアナが家族と一見ありきたりに思える会話を交わす。しかしオープニングナンバー「Just Another Day」では、1人ひとりが抱える葛藤が吐露され、彼らがダイアナの長年の病気による労苦が積み重なり、崩壊しかけた家族であると判明する。 ダイアナは現実と妄想の区別がつかない状態が多く、そんな彼女を辛抱強く支えるダンも限界寸前で踏みとどまっている。ゲイブは母に執着し、ナタリーは母から愛されている実感が持てず、その不満を発散させるかのように家の外に居場所を求めていた。だが、ダイアナが新たな治療方法を始めて少しずつ前進する中で、家族それぞれの状況が良いほう、あるいは悪いほうへと傾いていき、家族内のバランスも変化していく。 シリアスな題材を扱う本作だが、ダイアナの躁状態を象徴するロックテイストの楽曲や、ジェットコースターのように乱高下する登場人物たちの心情を盆を駆使して見せる演出、色とりどりの照明など、エネルギッシュなステージが展開する。さらに特徴的なのは、その時々のキャラクターの状態や心境が衣裳の色で表されることだ。ダイアナは、精神不安定な状態では真っ赤なドレス、治療の影響で記憶を失った場面では白いブラウスを着用し、終盤は本作のテーマカラーである紫のTシャツを身に着ける。それぞれの色が何を意味するのか、家族のバランスが変わるにつれ各キャラクターの衣裳の色がどう変化していくのかに注目しよう。 ダイアナ役の望海は、病からくる彼女の不安定さを、激しさからか弱さまで幅を持たせて体現。自分でコントロールできない人生をそれでも歩もうとする人間としての底力を、持ち前のパワフルな歌声で表現し、観客を惹きつける。家族を撹乱するゲイブ役の甲斐は、無邪気な笑顔の中に危険さを潜め、母を恋人のように甘い眼差しで見つめる。一方、ソロナンバー「I'm Alive」では大きな身体で縦横無尽に舞台を駆け回り、ゲイブのあふれんばかりの気迫を見せつけた。 小向は、ナタリーが抱く将来への諦念や不安を等身大で表し、観客の共感を誘い、そんなナタリーに一途に恋するヘンリー役の吉高は初々しい演技で2人のシーンを心温まるものにした。ダン役の渡辺は、機能不全の家族に頭を悩ます父親を人間味たっぷりに演じ、ドクター・マッデン役の中河内は、一家に寄り添う医者の姿を、時に冷静沈着に、時に狂気的に立ち上げた。 東京公演は12月30日まで。その後、1月5日から7日まで福岡・博多座、11日から13日まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで公演が行われる。 ■ ミュージカル「next to normal」 2024年12月6日(金)~30日(月) 東京都 シアタークリエ 2025年1月5日(日)~2025年1月7日(火) 福岡県 博多座 2025年1月11日(土)~2025年1月13日(月) 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール □ スタッフ 脚本・歌詞:ブライアン・ヨーキー 音楽:トム・キット 訳詞:小林香 演出:上田一豪 □ 出演 ダイアナ:望海風斗 ゲイブ:甲斐翔真 ダン:渡辺大輔 ナタリー:小向なる ヘンリー:吉高志音 ドクター・マッデン:中河内雅貴