教室の窓ガラスは割れ、生徒が他校とケンカ…東大合格者数トップクラスの進学校「西大和学園」の“荒れていた過去”「窓から机が落ちてる!」
「殴られたんか? 口から血い出てるやないか」 「先生、人数がちゃいますもん。あいつら大勢で卑怯やねん」 「なんや、やられっぱなしか? 尻尾巻いて帰ってくんな!」
教室の窓ガラスを割った犯人は特定できず
数日後、学校の理事長室。 「そうですか。机と、駅でのケンカですか」 私は校長からの報告を受けていました。 開校から数カ月、こんな報告には慣れっこになり、もう驚くこともありません。 「机を投げたのは、先週のトイレットペーパーの子と一緒ですか?」 「ああ、いましたな。トイレットペーパーを廊下でまき散らしていた子らが。あれとはまた別の生徒ですね」 「ほんなら、以前、教室の窓ガラスを割った子かな?」 「ああ、そうです、そうです。でも、窓ガラスを割ったのはほかにもいますから。それと最近、通学路の工事をしている業者から苦情が来まして。なんでも塗りたてのコンクリートに足あとをつけた奴がいると。たぶん、うちの生徒のイタズラに違いないから、犯人を突き止めてくれと言うてます」 「誰の仕業か分かったんかな?」 「いえ、それがまだ。ケンカなら、おおよその見当はつくんですがね」 「……そうですか」 教員たちの前では平静を装っていたものの、こうした報告を聞くたびに、私は心のなかでいつもつぶやいていました。 「こんなはずではなかった……」 40歳で「地元・奈良県に高校をつくろう」と思い立ち、3年間、準備を進めてきたなかで、私の頭のなかでは理想の高校がはっきりと形づくられていました。その理想とは、一言で表すなら「日本一の高校」です。
漠然としていますが、少なくとも生徒が教室の窓から机を放り投げたり、ケンカ三昧で近隣にご迷惑をかけたりするような学校でなかったことはたしかです。だからこそ、「こんなはずではなかった」のです。
「進学校トップクラス」を目指して学校を創設したが…
「日本一の高校」という理想には、もちろん「進学校としてもトップクラスを目指したい」という思いも当初から込めていました。 実際、1期生を募集するときに関係者に配布した学校案内には、建学の趣意や本校教育の特色として、こんな一文を盛り込んでいます。 〈・本校は第一に、生徒ひとりひとりが自己の能力、個性を極限まで開発し、自己実現のよろこびを感得しうるように最善を尽くさなければなりません。 ・進路は高校教育の総和です。従って進路指導の徹底を期し、特に進学のための十全な素地づくりを図ります。 ・西大和学園の出口に有名大学の入口がある。――そう言われるべく、まず関関同立合格の学力はつけます。そして、その延長線上に国公立大への展望もひらけてきます。 ・私学としての可能性を極限まで追求し、責任ある指導をします。かくして清風、明星、上宮等の域に可及的速やかに到達致したく存じます。〉 ちなみに「関関同立」とは、関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学の関西有名私大4校を指します。また、「清風、明星、上宮」は、いずれも大阪にある名門私学です。 第2次ベビーブームの世代で、生徒数が急増していたこの時代、奈良県でも県内だけでは高校、特に進学校が足りず、大阪など関西圏に優秀な生徒が流れていく現状にありました。それを食い止めるべく、まずは大阪の有名私学並みのレベルを目指していたのです。 「授業に飽きた」ヤンチャな生徒が学校をサボり、街で迷惑行為を…東大合格者数トップクラスの進学校「西大和学園」が直面していた“問題” へ続く
田野瀬 良太郎/Webオリジナル(外部転載)