子ども広報部員が奮闘 大阪・西淀川区の製造業を売り出せ
まちなかのオープンイノベーションへ
2期目を迎えたものづくりレンジャー、どんな役割を担っているのか。記者は昨年度の1期生の活動ぶりを、任命式からものづくりまつりでの発表まで、折にふれて取材した。工場見学や社長らへのインタビュー取材を終えた隊員たちが、企業案内パンフづくりに取り組む。編集会議はしばらく行きつ戻りつしつつも、いざ方針が固まると、隊員たちは生き生きとペンを走らせた。 全員の合意を形成しながら、ゆるやかに事を進めていく和の精神チーム。自身で手掛けたい分野を主張し合い、瞬時に役割分担を決め込む個性きらめきチーム。日本の製造業を支える多様な組織運営の妙にも通じるようで、おもしろかった。 やがて、ものづくりまつりの発表本番。各チームが次々とステージに登壇し、完成した企業案内パンフをもとに、PRプレゼンを精一杯こなした。隊員たちの活動が実り、来場者も大幅に増えた。記者は取材で知り合った隊員たちと再会し、隊員手書きのカラフルな名刺をもらった。企業名を書き込んだ名刺を手渡すことで企業広報に一役買おうというわけだ。大人たちが愛らしい名刺を受け取ると、当該企業に対する好感度も上がるに違いない。実質本位の工場街で起きた、ささやかながら画期的な変化だろう。 ものづくりまつりは従来、区内の製造業有志が区民との交流を求めて開催。子どもたちは金属加工などの体験を楽しむ受け身の立場だった。会場で経営者と子どもたちの会話が弾む。「おっちゃんたちはものを作るのは得意やけど、宣伝するのがへたなんや」「そんなら僕らが宣伝したるわ」。子どもたちに企業広報を手伝ってもらうプランが浮上。地元区役所と連携してものづくりレンジャー事業が実現した。子どもたちが広報活動の受け手から担い手になった瞬間だった。 工場見学する隊員たちは、いわばトリックスターのようにものづくりのまちを適度にかきまぜて、新鮮な刺激を与え始めているようだ。保護者から「子どもたちの活動を助けて一緒に勉強するうちに、ものづくりに興味がわいてきた」「大人もいろんな工場を見学したい」などと、ファミリー相乗効果を指摘する声が届く。 経営陣も手応えをつかむ。「子どもたちから学ぶことが多い。仕事は楽しいですかと聞かれ、改めて責任の重さを痛感した」「西淀川の製造業はBtoB分野が主力だが、これからは業務用分野でも最終消費者に支持されるデザインや使いやすさが求められる。子どもたちや保護者の意見をものづくりに生かせるようになれば」。働き方を見つめ直したり、技術向上に留まらずソフト重視へ発想を転換する契機にしたいようだ。 西淀川区では、中小企業の多様な技術を組み合わせてブレイクスルーに挑む異業種コラボの気風が息づく。人間が搭乗するガンダム型ロボットの共同開発プロジェクトも、ロボットのサイズを拡大しながら進行している。 まち全体で持ち前の技術力を軸に、ひらめきやアイデア、デザインなどを、いかに結集するか。子どもたちの広報支援活動が大人たちをも巻き込んで、将来的にはまちなかのオープンイノベーションにつながるかもしれない。ものづくりレンジャー活動の詳細は西淀川区役所の公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)