前回王者・山梨学院、したたか「足攻」で突破口 センバツ
◇センバツ高校野球1回戦(20日、甲子園) ◇○山梨学院7―1京都外大西● 山梨学院はしたたかだ。京都外大西の好左腕・田中遥音に対し、五回までスクイズによる1点しか奪えなかった。そこで、持ち味とする「足攻」で揺さぶりをかけた。 【熱戦をもう一度】山梨学院-京都外大西(1回戦) 1―1の六回無死一塁、4番・梅村団の打席。一塁走者の河内佑樹は田中の投球に合わせて、盗塁のスタートを切るような動きを繰り返した。腕を前後に大きく振り、両脚をバタバタと動かす「偽走」だ。 左腕の田中からは一塁走者が嫌でも視界に入る。田中は「『バッター集中』と思っても、どうしても走者に目が行ってしまった」。 狙い通りに梅村が四球を選ぶと、次打者が送りバントを決めて1死二、三塁。6番・横山悠の遊ゴロの間に河内が生還し、勝ち越しに成功した。田中の集中力をそぎ、この回さらにもう1点、七回には一挙4点を奪った。 山梨学院は「走塁で相手を崩す」をテーマに、年間通じて実戦形式の走塁練習を積み重ねている。偽走もそのうちの一つ。河内は「本当に盗塁する時と同じように、しっかりとスタートを切ることが大事」と説明する。打力が持ち味の中軸打者にも走塁の約束事はしっかりと浸透している。 チームの昨秋の公式戦の1試合平均3・67盗塁は、今大会の出場32校中トップ。この日の盗塁は一つだけだったが、走らずとも重圧はかけられる。 初優勝した昨年のチームに比べて、力のある選手がいないと自他ともに認める今年のチーム。それでも好投手から得点を奪うすべを磨き、春の甲子園に帰ってきた。やるべきことが分かっているから、前回王者はやはり強い。【石川裕士】