「日本の和歌」と「古代ギリシャの詩歌」の「意外な共通点」…世界の見え方を「一変させる」驚きの力
不思議な由来をもつエピテトン
また、その由来がよくわからないのも枕詞と同じです。神々の女王であるヘーレー(ヘーラー)のエピテトンが《白い腕》というのはいいでしょう。ところがこのヘーレー、少し変わったエピテトンがあります。 それは《牛眼の》というものです。 「牛眼ってなんだよ」と思ってしまいますが、どうもこれはヘーレーの祭礼のときに牛を使ったことに由来するようなのです。《牛眼の》と詩人が詠うと、ヘーレーの祭礼がそこに出現し、そしてヘーレーを呼び出す。そんな依り代のような言葉がエピテトンです。 神の王といわれるゼウスには《アイギスをもつ》というエピテトンが使われます。アイギスというのは英語ではイージス。イージス艦のイージスで、アイギスは無敵な武器と言われています。しかし、ゼウスがこれを振ると雷鳴が起きることから、降雨の呪術と関係しているのではないかともいわれています。 アイギスによって降雨の呪術が行われ、それがそのまま天につながりゼウスを呼び出す。「久方の」のようなエピテトンがアイギスです。 ギリシャのエピテトンも祭礼、呪術と関係があるようです。 * 『「中国の古典」と「日本の古典」のなかで、「神聖な立場」を与えられた「意外な動物」をご存知ですか?』(11月11日公開)へつづきます。
安田 登(能楽師)