雑草魂、習志野準V (その1) 健闘に惜しまぬ拍手 /千葉
<2019 第91回センバツ高校野球> 平成最後の甲子園を準優勝で飾った--。第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)最終日の3日、習志野は決勝で東邦(愛知)に0-6で敗れ、県勢初のセンバツ優勝を逃した。一回に3点を先取された先発の山内翔太投手(2年)は緩急を使って粘り強く投げたが、打線の援護を得られなかった。継投した飯塚脩人投手(3年)も追加点を奪われて流れを変えられず、得意の機動力を生かした攻撃も奏功しなかった。10年ぶり4回目の春に初めて進んだ決勝の舞台。「雑草魂」を胸に最後まで戦い抜いたナインに、スタンドからは惜しみない拍手が送られた。【秋丸生帆、池田一生、宗岡敬介、田畠広景】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽決勝 習志野 000000000=0 東邦 30002001×=6 春の陽気に包まれた甲子園。一塁側アルプススタンドは、試合開始前から観客で埋め尽くされた。吹奏楽部の藤川智帆さん(3年)は「勝てば県勢初の優勝。みんなで全力で応援します」と緊張した表情で拳を握った。サイレンとともに試合が始まる。恒例の吹奏楽部による校歌の演奏が続く中、先頭の根本翔吾主将(同)が中前打を放った。 2回戦で負傷し、一時は戦列を離れた根本主将の一打。得点の期待は高まったが、もう一人の主将で2番の竹縄俊希主将(同)の犠打は投前に転がり、ダブルプレーで流れを作れなかった。直後の一回裏、山内投手が中越え2点本塁打を浴びるなど3点を失った。 準決勝まで3試合連続で逆転勝ちの習志野は粘り強い守備を見せる。二回裏の左翼線際の飛球を、帽子を落としながら疾走する左翼手の竹縄主将がダイビングキャッチし、笑顔で右手を挙げた。スタンドからは「俊希ー」の大歓声。野手の奮闘に応えるように山内投手は調子を上げ、相手打線を抑えた。 四回表に先頭の根本主将が左前打で出塁し、スタンドに笑顔が広がる。OGの江川蒔月さん(19)は「いつも後半で返してくれるので焦りません。がんばれ根本」とエール。しかし、直後にエンドランを失敗し、好機を広げられなかった。 五回裏にアクシデントが起きる。山内投手が先頭打者のライナー性の打球を足に受けて負傷交代。継投した飯塚投手は2死二塁から本塁打を浴び、0-5と点差が開いた。スタンドに不安が広がる一方、吹奏楽部副指揮の加藤昇竜さん(3年)は諦めない。全国からの応援メッセージが届く球場の電光掲示板を指し、「あんなに応援してくれている。まだまだ負けられない」と勢いよく指揮の腕を振った。 飯塚投手は七回に自己最速の148キロを記録するなど気迫の投球をみせたが、八回裏に犠飛で追加点を奪われた。打線も八回まで散発の3安打と、逆転の流れを作れないまま、九回表の最後の攻撃を迎えた。 先頭打者から好機のテーマ曲「レッツゴー習志野」が鳴り響くが、二ゴロ、邪飛と打者2人が倒れた。「最後の春の舞台で悔いの残らないように」と決勝に臨み、この日2安打の根本主将が打席に。応援団の期待を乗せた声援も大きくなる。4球目の変化球にうまく合わせたが打球は三塁手正面へ。一塁に頭から滑り込んだが、間に合わず試合は終わった。 「よく頑張った」「ありがとう」。試合後、アルプス席に向けて礼をした選手たちにねぎらいの声が飛んだ。紫紺の優勝旗は逃したが、習志野ナインの健闘をたたえる拍手は鳴りやまなかった。野球部の板橋洋部長は「完敗だが、創部初の決勝進出はすごいこと。夏に必ず帰ってきたい」と話した。 ◇練習の成果発揮 校長「誇りに」 習志野の小西薫校長は「甲子園という大きな舞台で日ごろの練習の成果を発揮し、準優勝できましたことをとても誇りに思います。これからも一生懸命練習に取り組んで、さらに新しい伝統を築いてください。高校関係者の皆様や地域の方々からたくさんの支援と熱い声援をいただき、本当にありがとうございました」などとコメントを寄せた。 ◇メッセージ次々と ○…習志野市役所ロビーに習志野野球部へのメッセージボードが置かれ、市民らが選手たちに応援や感謝の思いをつづった。ボードは2日の準決勝後に市が急きょ設置。決勝に向けて、「大きな桜を咲かせてください!」「美爆音でレッツゴー!」などの激励メッセージが寄せられた。3日の決勝後は「夢をありがとう。次は夏で!」「習高魂を見せてもらいました」「皆さんが頑張る姿を見て勇気をもらえた人がたくさんいます。習志野の誇りです!」などと、感謝の言葉が次々と貼られていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■白球譜 ◇「本当の実力を」 角田勇斗遊撃手 習志野・2年 一回表2死、フルカウントから外角の直球を見送り、三振に倒れた。四回の続く打席も外角の直球で見逃し三振。「受けにまわりすぎた」と試合後のベンチ前でつぶやき、唇をかんだ。 「打球が前に飛ばない」。センバツ直前に打撃の調子を崩し、小林監督に打順を1番から9番に下げると告げられた。昨秋の公式戦は勝負どころで一本を放ち、周囲から「何かを持っている男」と呼ばれていた。悔しくてショックだったが、「下を向いてもしょうがない」と毎晩、バットを振り続けた。 1回戦にフェンス直撃の3点適時三塁打。準々決勝は3安打2打点と復調の兆しを見せた。この日は3番に座ったが、3打数無安打。大会通算打率は2割にとどまり、「逆境でチームを救う一発を打てる、本当に実力を持っている男にならないとだめだ」と反省した。 軽快なフットワークとグラブさばきで決勝進出を支えた遊撃手は、中学時代に全国制覇を経験しており、準優勝に満足しない。「決勝で負けたら、初戦負けと同じで優勝じゃない。どんなに練習が厳しくても乗り越えて、また甲子園で活躍したい」と夏を見据えて高い目標を掲げた。