寄付だけで調査報道できるか 元朝日記者が手がけるワセダクロニクルの挑戦
政府や大企業の内部資料などを入手し、証言を集めて隠された事実を報じる「調査報道」。これまで新聞社などの大手メディアが担ってきたが、今月、活動費を全て寄付で賄おうとする新しい調査報道メディア「ワセダクロニクル」が誕生した。記事の第一弾「電通グループからの『成功報酬』」が1日に公表され、9日には続報も報じられた。一方で、大手メディアに後追いする動きは見られない。朝日新聞社を退職してワセダクロニクルの編集長に就いた渡辺周氏に非営利で調査報道に取り組もうと思った理由などをたずねた。
ワセダクロニクルとは早稲田大学ジャーナリズム研究所(所長・花田達朗教授)が運営する調査報道メディア。朝日新聞で調査報道を行ってきた渡辺周氏が編集長。早稲田大学に拠点を置くが、早稲田大学から資金提供は受けず、独立して取材活動を行う。広告モデルや課金モデルを取らず、取材・活動費を寄付のみで賄うモデルを目指す。 調査報道の第一弾として、報道機関である一般社団法人共同通信社の100%子会社が、共同通信社が記事を配信する見返りに電通の子会社から現金を受け取っていたとする記事を公表した。
取材対象者からの抗議「予想していた」
──報じた記事の内容に、共同通信社から抗議があった。反論は予想していたか そりゃ当然きますよね。当り障りのない話ならハレーションも起きないし、無視されて終わりなんでしょうけど、ファクトを突きつけるのが調査報道であって、テーマにしたものが非常に大きな話題、相手に打撃がある話題であればあるほど抗議とかその他ハレーションはある。そこは宿命だと思うんです。ただ取材して記事を出すだけではなく、調査報道は相手からの反応とかも込みで、自分たちの発信をしていくということですから。 調査報道が日本で下火になってきているのはそこも大きいと思う。時間がかかる、お金もかかる、以外にもそういうハレーションが起きるような話題というのはなかなか面倒くさいということで敬遠しがちだ。 ──大手の媒体はこの話を追いかけていないが それでいいんですか、と言うだけですね。こちらは粛々とやるだけですから。タブーはなしでやるべきと思ったらちゃんとやる。色々計算せずに。やれるかやらないかは取材ができたかどうかで判断すべきでそれ以外の要素を入れるわけではない