寄付だけで調査報道できるか 元朝日記者が手がけるワセダクロニクルの挑戦
新聞社の方が調査報道がやりやすいはずだが……
──なぜ朝日新聞を辞めて非営利の調査報道メディアをつくったのか 調査報道を特化してやりたかったが、会社にいてはやりづらい環境になってきた。調査報道をやらないと自分の仕事の手応えが感じられず、誰かの役に立っているのかと。調査報道は犠牲や負担を伴うが、だからこそやらないといけない。理屈じゃないところもありました。 新聞社がやったほうがいい面もある。あれだけの部数を誇っていて飛行機も持っているし、色々なバックアップ体制も充実している。しかし担当によっては自由に動けなかったりする。調査報道の部署にずっといられるわけでもない。デスクとして部署を出るという年齢だったりもする。そこは自由にやれた方がいいと思った。また、日本のメディアは会社割り。一人一人のジャーナリストが職業的な横のつながりを持って、テーマごとにチームを作ってやるほうが、機動力がある。それをワセダクロニクルでやろうとしています。
学生が取材支援担うが「サークルでもマスコミ塾でもない」
──どのような体制で取材をしているのか 元新聞記者やドキュメンタリー作家ら、フリーのジャーナリスト数人で取材チームを作り、デスクも含めて10人ぐらいの体制で進めている。そのほかにジャーナリスト志望の学生が20人ぐらいいる。学生は教育を兼ねてだが批判対象の取材とかはやらせられないので、例えば情報公開請求のやり方とか資料の読み方を教えたり、国会図書館への調べ物を頼んだりしている。 ──学生はどういうスタンスか。サークル活動?マスコミ塾? サークルのようなそんなぬるい感じではない。テーマもシビアなので秘密も守れないといけないし、ふわっとした感じで来られても困る。単位が取れるわけでもない。マスコミ塾と思ってくる人もいるが、マスコミ塾ではありませんよと言っている。 ジャーナリスト志望の学生しかいないので、それぞれが卒業して現場に出るときに、ここでの体験を活かせるように知識とかノウハウとか、スピリット的なものを教えている。どうやってネタをとるのか、最後の詰めはどうするのか、私達が経験上のことをお話しする座学もある。卒業後ジャーナリストになってそこで頑張ってまた戻ってくるとか、ワセダクロニクルに還元してもらうとか、そういういい循環ができればいい。