海外メディアは東京五輪追加費用を巡ってのIOCドタバタ劇をどう報じたのか「180度転換はIOCのミスと見なされる」
1年延期された東京五輪の追加費用についてIOC(国際オリンピック委員会)が20日、突然、HP上で、「日本の安倍晋三首相が、現行の契約条件に沿って引き続き日本が負担することに同意した」という見解を表明。合意の事実がなかったため、日本の政府、組織委員会が反発し「安倍総理とトーマス・バッハ会長との電話会談では費用負担について取り上げられた事実はなく、双方合意した内容を超えて、このような形で総理の名前が引用されたことは適切ではない」と文書の削除をIOCに要請した。 21日になってIOCは、当該部分を削除して「IOCと組織委員会を含む日本側は、延期のさまざまな影響について共同で査定し、話し合いを続けます」という見解に書き直した。またバッハ会長が、先日、ドイツのメディアに答えていたようにIOCの負担額を「数億ドル(数百億円)」としていた部分も削除した。このIOCのドタバタ劇を海外メディアはどう見たのか。 英国のガーディアン紙は、「東京2020主催者がIOCに安倍首相が追加費用負担に合意したとする主張の削除を強く求める」との見出しを取り、「東京(五輪の)主催者は、安倍首相が追加費用を負担することに合意したように見られるIOCのウェブサイトでの言及を削除するように要求する異例の行動を取った」と報じた。 同紙は、「五輪の再準備の費用額と、それを誰が支払うかについては、IOC、もしくは日本政府によってまだ明らかにされていない。20億ドル(約2200億円)から60億ドル(約6500億円)の間の金額が必要と見積もられている。東京が五輪開催を決めた2013年に結ばれた開催都市契約では、東京都、日本オリンピック委員会と地元主催者が大会費用の大部分を支払う義務を負っている。これは新型コロナウイルスのパンデミックを原因とする先例のない延期の場合を含んでいる」と、IOC寄りの見解を示した上で、こう問題提起した。 「しかし、この問題は、新型コロナウイルスの影響によって経済が悪化している(日本の)主催者、政府にとってメンツ潰されたくないためのデリケートなテーマとなっている」 米のCBSスポーツは、「東京五輪の主催者がIOCの延期費用を日本が負担するという主張をひっくり返す」との見出しを取り、「東京五輪の主催者たちとIOCは、延期された東京五輪2020の請求書(追加費用)を誰が支払うかについてまだ合意に達しておらず、火曜日に行き詰まりの度合いが高まった」と報道。また同メディアも、日本の報道を引用する形で、延期による追加費用は、20億ドル(約2200億円)から60億ドル(約6500億円)必要になるとの見通しを伝えた。 五輪、パラリンピック競技を扱う英国メディアの「inside the games」は、「IOCと日本が東京2020の延期で生じる追加費用を誰が支払うかで衝突」との見出しを取り、IOCが削除した五輪延期の財政影響に関する質疑応答部分を紹介しつつ「今日のHPの修正で、IOCは『延期の影響について、IOCと、東京2020組織委員会を含めた日本サイドは連帯して査定、話し合いを続けていくだろう』と言及した」と訂正された内容を伝えた。 「このIOCの180度の(態度の)転換は、日程が変更された五輪の組織運営に不確定要素をもたらし、IOCの最新のコミュニケーションミスとして見なされるだろう。IOCは、これまで1年の大会延期につながった新型コロナウイルスの急速な広まりにもかかわらず“東京2020を今年に計画通りに行う“と主張し続けて、アスリートやそのほかの関係者から批判を受けていた」と、IOCの姿勢を批判的に伝えた。 記事はまた、IOC調整委員会のジョン・コーツ委員長と、東京五輪の組織委員会が協議していたことを伝え、コーツ委員長が、再準備に向けての費用抑制のため、日本各地で設置される予定だったライブサイトと呼ばれるパブリックビューイング会場の削減を提言していたことを紹介している。