なぜテールスープは美味しいの?→専門家が教える「しっぽの中身」の秘密とは
ひとりで歩かせたいのならせめて、筋肉の代わりになるようなバネか何かを与えてあげなくてはいけない。そうなると、彼らはずいぶんといかつくなってしまうので、夜にそういったものに追いかけられるというのは、怪談というよりはSF的な怖さになってしまうかもしれないが……。 さて、真面目な話に戻ろう。先ほどから何度も述べているように、しっぽには仙骨や尾椎といった骨があり、その骨には運動を可能にするための筋肉である尾筋が付着している。 脊椎動物のしっぽには、主にしっぽの伸展や屈曲といった上下運動に関わる筋肉、あるいは外転をはじめとする左右方向の運動に関わる筋肉などが存在している。 背側には伸展に関わる尾伸展筋群や外転に関わる尾外転筋群、腹側には屈曲に関わる尾屈筋群が見られるのが一般的だ。具体的に、どういった種類の筋肉がどういったかたちで存在するかは種によって異なり、これはしっぽの長さや使い方と大きく関係している。 たとえば、哺乳類の多くで見られる尾筋の中に、骨盤に起始し、尾椎に停止する筋群がある。
筋肉のつく場所により、腸骨尾筋、恥骨尾筋、坐骨尾筋と基本的には3種類に分けられるのだが、これらはしっぽのある種においてはしっぽを屈曲、腹側へ引っ張る動作に関与する。 しっぽを持たない我々ヒトでは、ほとんどの尾筋は失われているが、この骨盤尾筋群だけはその機能を変えて我々にも存在している。ヒトにおけるこれらは骨盤の出口である骨盤底に存在しており、膀胱や子宮、直腸といった骨盤内臓器が正しく配置されるよう支えている。 ● 専門家によるテールスープの“楽しみ方” ホロホロに煮込まれた骨は標本用にうってつけ 最後に、テールスープの美味しさに関する豆知識と、私のささやかな楽しみをこっそりお教えしよう。テールスープがうまいわけ。それは先述したように、尾椎や尾筋から旨味が溶け出しているためである。 だが、テールスープの魅力はその美味しさだけではない。骨ごとごろんと煮込まれたテールスープを見ると、私はとびきり嬉しくなる。これは骨を持ち帰るのにいいぞ!とワクワクが止まらなくなるのだ。カバンの中にビニール袋を常備してあるのは、このときのためであると言っても過言ではない。