自治体の「カスハラ対策」名札は“名字のみ”、顔写真ナシ…トラブル回避、SNSでの誹謗中傷を防ぐのに有効? 専門家が解説
◆イニシャルのみ、ビジネスネーム… 本名を記載しない「名札」
吉田:カスハラはなくなってほしいですが、そんなカスハラ対策のために職員や従業員が付ける名札に変化が出てきているようですね。 塚越:今年1月、茨城県土浦市の女性職員が、来庁した男性に対応していたところ、男性が無断で女性をスマホで撮影したことがありました。特にトラブルがあったわけでもなく、意図は不明ですが、不審に思って職員が画像を確認すると、顔と一緒に名札も写っていたそうです。名札を見れば顔と名前が一致するため、女性職員は強い不安を感じたとのことです。これは怖いですよね。 土浦市ではこの件を機に今年4月から職員の名札表記をフルネームから名字だけにして、顔写真の掲載もやめたとのことです。他の自治体でも実名表記をやめているところが増えています。名札から分かることは多くあり、最近ではSNSで悪質な嫌がらせをするケースもあります。 ユージ:自治体だけでなく、企業でも名札に変化が出ているんですよね? 塚越:コンビニ大手のローソンは、6月から名札表記を見直して、これまで通り実名以外にも、アルファベットやイニシャル表記も可能としました。京王バスでも、4月1日から現在の本名だけでなく、乗務員自身が考案した「ビジネスネーム」を導入して、自分の判断で表記を選べるようにしたり、大手コーヒーチェーンの「タリーズ」も名札を実名からイニシャルに変更するなどの対応をする企業が増えています。私がよく行く喫茶店でも、店員さんのネームプレートがイニシャルに変わっている店があります。 ユージ:フルネームである必要もありませんからね。
◆理不尽な対応を受けても「SNS」での告発には注意
ユージ:塚越さん、こういった名札で「実名表記」しないという変化、カスハラ対策につながっていくのでしょうか? 塚越:こうした対策が必要となる一番大きな要因は、やはり「SNS」での誹謗中傷です。真偽のほどが定かではなくても、SNSには拡散力があります。事実無根の内容でも、匿名アカウントに「このお店の◯◯という店員はダメ」といった投稿をされたら困りますよね。あとは、実名を見てSNSで検索して友達申請してくるケースもあるようです。それも困りますよね。 実際に被害を受けなくとも、そうした「リスクがある」ということだけで、特に就職を控える大学生などは、あえて人前に出て仕事をしたくないと思ってしまいます。接客業では人材確保の面でもこうした配慮をしていると考えられます。 先ほどユージさんが言った通り、店員さんに実名を出して働いてほしいかというと、微妙ですよね。「実名で働いていないと従業員がいい加減な仕事をするようになる」という意見があるようですが、正当なクレーム・抗議であればイニシャルでもお店には伝わります。 一方で、緊急時などを除けば、クレームを入れる側もある程度落ち着いて要求を伝える必要があります。結果的に勘違いだったとしても、SNSへの投稿は脊髄反射的にできてしまいます。そうすると、より大きなトラブルにつながってしまうこともありますので、お店側・お客さん側のどちらも注意が必要です。個人的には、ビジネスネームをつけるという取り組みは面白いなと思いました。 ユージ:仕事とプライベートで名前を分けてもいいと思いますけどね。 塚越:「ここでは『ジョージ』と呼んでください」みたいな時代がきてもいいと思います。 (TOKYO FM「ONE MORNING」2024年7月18日(木)放送より)