ホンダ・日産が大慌て「中国のEV」が世界を席巻する「揺るがない理由」…なぜ日本のクルマは敗北を喫したのか
熾烈な競争社会だからこそ
かつてのソ連に典型的に見られるように、共産党独裁政権下では、特定の国営企業がコスト意識や効率という視点など全く無視して、自動車などの耐久消費財を生産してきた。それらが国際競争力を持つわけがない。 ところが、中国では、1978年に鄧小平が改革開放政策に転換したため、市場経済の要素が多数取り入れられた。「社会主義的市場経済」の試みであり、深圳などの経済特区では、先端技術産業が花開いた。人民公社は解体され、外資が積極的に導入され、民間企業による競争が激化していった。 それは、国営企業による計画経済とは対極的なものであり、深圳、珠海、汕頭、厦門などの経済特区では、資本主義社会と変わらない活力があり、世界中から人材が集まり、多くのスタートアップ企業が誕生した。 企業間の競争は日本以上であり、失敗すれば会社は消える。 たとえば、自動車メーカーについては、BYDに加えて、小米、零跑汽車、理想汽車(Li Auto)、極氪(Zeekr)、蔚来汽車(NIO)、賽力斯(SERES)、小鵬汽車(Xpeng)、埃安(AION)、智己汽車(IM Motors)、嵐図(VOYAH)、智己汽車など多くのメーカーがひしめき、熾烈な競争を展開している。 中国の歴史を繙くと、598年から1905年まで実施された科挙に見られるように、厳しい競争社会である。今でも、大学入試、そして、入学してからも競争が激しく、それは日本の大学の比ではない。科挙が今も続いているのである。その競争の激しさが少子化現象につながっている。また、様々な社会不安の原因にもなっている。 最近公表されたイギリスの大学評価期間QSの「QSアジア大学ランキング2025年版」によると、1位が北京大学、2位が香港大学、3位がシンガポール国立大学、4位が南洋理工大学、5位が復旦大学、6位が香港中文大学、7位が精華大学、8位が浙江大学、9位が延世大学、10位が香港城市大学である。日本のトップは東京大学で、21位である。 この大学ランキングが示すように、人材開発の点でも、中国の競争社会は厳しい。古代からの競争社会という中国の歴史的特性を無視して、今の中国を語ることはできない。嫌中派のネトウヨが目を塞いでいる側面である。中国をさげすみ、罵詈雑言を浴びせただけで日本が再生するわけではない。 中国批判をすれば、テレビなどのマスコミで歓迎されるからか、嫌中を売り物にしている者も多いが、彼らこそ亡国の輩である。
舛添 要一(国際政治学者)