『虎に翼』を支えたよねと花江の共通点 土居志央梨&森田望智が体現した“女性の可能性”
ああ、ついに、ついに朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)が終わってしまう……。ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)はもちろんのこと、この作品に登場したすべての人々と、もう会えなくなってしまう。そんなことを思うと寂しくてしょうがない。 【写真】最高裁の大法廷に立つよね(土居志央梨)の姿 視聴者の一人ひとりにとって、とくに思い入れのある登場人物がいるのではないだろうか。それくらい、誰もがそれぞれに個性の立っている、愛すべきキャラクターなのだ。私の場合は、花江さんとよねさん。演じているのは森田望智と土居志央梨である。 森田が演じている猪爪(米谷)花江はご存知のとおり、寅子の女学校時代からの親友だ。寅子とは異なる考え方の持ち主で、良き妻に、そして良き母になることが夢であった彼女は、寅子の兄の直道(上川周作)と早くに結婚。戦争により夫を亡くしてからは、彼女こそが猪爪家の大黒柱的存在であり続けてきた。彼女がいなければ、現在の寅子はいない。 いっぽう、土居が演じている山田よねは、明律大学女子部からの寅子の同期で、彼女もまた特別な存在だ。その気の強さから、ときに考え方の異なる寅子と対立し合い、またあるときには肩を組み合い、切磋琢磨し合いながらここまでともに歩んできた。いや、走り続けてきた。彼女がいなければ、現在の寅子はいないのだ。 半年間の放送を経て実感しているのは、花江とよねにはいくつかの共通点があるということ。そのうちの大きなものとして、異なる立場から異なるスタンスで寅子を支えていたことと、それぞれが本作の持つテーマの一部を背負っていたことが挙げられるのではないだろうか。いや、間違いなくそうだ。 本作のヒロイン・寅子は好奇心旺盛で、とても柔軟な思考の持ち主である。だから誰かほかのキャラクターの主張を「素敵ね」と受け入れられる器の大きさを持っている。花江もよねも寅子と同時代を生きる女性として、自分なりの主張というものをそれぞれに持っている存在だ。物語が26週も続いて繰り広げられ、いまでこそみんな異なる立場や考え方を受け入れられるようになってきたが、最初からそうでなかったことを私たち視聴者は知っているだろう。 女の幸せは結婚にこそあると信じてやまない花江の考えに耳を傾け、男社会の中で自分にも他者にも厳しく生きようとするよねの態度に寅子が心を開くことで、彼女たちの“生き方”はより際立つものとなっていた。バックグラウンドが異なるのだから、生き方が違って当然だ。そしてそのような柔軟で器の大きな寅子がいつも中心にいたからこそ、彼女らをはじめとする誰もが時代の変化とともに変わることができたのだろう。 とはいえ、寅子も人間だ。完璧ではない。間違いを冒してしまうことだって当然ながらある。そんなときに力になり、欠けたところを補ってくれていたのが花江とよねだった。