『虎に翼』を支えたよねと花江の共通点 土居志央梨&森田望智が体現した“女性の可能性”
土居志央梨と森田望智の芝居にみる“感情のグラデーション”
彼女たちが対照的な性格で各々の人生を歩んでいるように、これを体現する森田と土居の演技も対照的であり続けてきた。森田は基本的に穏やかで柔らかい佇まいが印象的だが、ここぞというときにはセリフ回しも所作も鋭くなる。いっぽうの土居は、硬質な演技をベースとしながらも、ふとしたときに棘が取れたように滑らかに。冷たいキャラクターの表面のその先には、温かいものがあるのだと絶えず示してきたのだ。 彼女たちはふたりとも、各キャラクターの軸となるものをブレることなく維持したまま、シチュエーションに合わせて変化させるのが抜群にうまかった。それも、感情のグラデーションが感じられるほど、いつも絶妙な塩梅だった。花江とよねのキャラクターを生きたものにしてみせた森田と土居の存在があってこそ、本作はさまざまな視聴者層から支持されるものになったのではないだろうか。 私たち一人ひとりがこの社会で共生していくうえで何かしらの役割を持っているように、本作に登場する誰もが何かしらの役割を持っているのは間違いない。『虎に翼』の世界における重要なポジションに、一人ひとりがついていた。だから誰もがかけがえのない存在であることは間違いないだろう。そんな中でもとくに花江とよねは目立っていたのだ。寅子の大切な友人として。そして、寅子とは異なる生き方を自信を持って貫く女性として。 振り返ってみれば花江もよねも、『虎に翼』の主人公だといえる存在だったのではないだろうか。森田望智と土居志央梨は両者ともに、俳優としてこれまでよりも大きな翼を本作で得たのではないだろうか。
折田侑駿