就活のために大学が「保護者の個人面談」を開催 「オヤカク」が必要な時代だからこそ
企業の採用活動の早期化に伴い、学生の就職活動のスタートも早まってきています。本格的に就職活動が始まるのは大学3年ですが、1年のうちから保護者も巻き込みながら、就活に向けての働きかけをする大学もあります。一方の企業も、内定を出した学生の親に、企業が確認をとる「オヤカク」が必要な時代です。大学が「保護者の就活相談」に力を入れる動きも見られます。 【写真】昔のイメージとは大違い? 女子高生に人気の意外な大学
「情報貧乏」の学生は
現在の就職活動は売り手市場です。就活をスタートしてすぐに内定がとれる学生が多いものの、「実はなかなか決まらない学生もいて、二極化が目立ちます」と中央大学の理工キャリア支援課長の五十嵐星汝(せいな)さんは言います。 「就活がうまくいく学生は、早い段階からさまざまな就活サイトなどに登録し、積極的に情報を取りに行ったり、周りに相談したりしています。うまくいかない学生はその逆で、動き出しが遅く、だれにも相談しない傾向があります。また、大企業や名の知れた企業にこだわることも、うまくいかない要因になりがちです。日本の企業は9割以上が中小企業。新卒の定期採用をしている企業のうち大手は4分の1で、最大手といわれる企業となると7%しかありません。そこに大量の学生が殺到すれば倍率が上がり、内定に至る人はごくわずかとなります。でも、大手に限らずとも優良企業はたくさん存在するし、そもそも新卒の求人倍率は1.7倍以上で、全員が収まるだけの求人はあるわけです。そういう実態を知らない『情報貧乏』の学生が、大手ばかり受けて失敗している印象があります」
親のための就活スケジュール表
学生に早くからキャリアに関する意識や知識を持ってもらうために、キャリアセンターではいくつかの対策を行っています。 例えば、中央大学では全学生を対象に、さまざまな就活関連セミナーやイベントを年間300回以上実施しています。しかし、求人情報サイトなどが多様化している今は、参加する学生は減少傾向です。 そこで行っているのが、保護者を巻き込んだ働きかけです。その一つが、大学側と保護者を結ぶ「父母連絡会」の機関誌でのキャリア・就活情報の提供です(年6回)。随時、就活の情報を提供し、卒業生の就職状況や就活の傾向、重視するポイントなどを保護者にも知ってもらうことで、わが子の状況を把握し、就職活動が進んでいない学生に声掛けをしてもらう狙いがあります。学年別に、就職支援の年間スケジュール表を掲載し、いつ、どんなセミナーに参加すれば良いのかを、保護者に理解してもらったりもしています。 保護者向けの機関誌「草のみどり」。大学の近況や学生生活の様子などとともに最新の進路・就職情報を掲載している また、2024年度は全国49カ所で、父母懇談会を開催します。各地のホテルなどを会場にして、就職に関する説明をするとともに、保護者の個人面談を実施し、個々の成績や就活の相談にも応じています。 「特に学生が親元を離れている場合は、わが子がどのような生活を送っているのかがわかりづらいものです。個人面談では勉学への取り組み具合を知ってもらうために成績表を示すほか、就活期の子にどのようなサポートをすべきか、アドバイスもしています。父母懇談会を親子で会話するきっかけにしてほしいと考えています」(五十嵐さん) そして「保護者も時代が変わっていることを認識し、意識を変える必要がある」と強調します。 「例えば、保護者は昔の情報のまま、公務員や銀行といった、いわゆる『堅い職業』ばかりを勧めようとする傾向があります。今はベンチャーや情報系にも優良企業があるし、学生が意欲満々で受けようとしているのに、保護者が『危なっかしい』とか『いつ首になるかわからない』とダメ出しをして、可能性をつぶしてしまうことも少なくありません。そのため、就活の現状を理解してもらえるよう、努力しています」 内定先の企業が、親に確認を取る「オヤカク」をすることが増えてきています。内定したにもかかわらず、親がだめ出しをしたことが理由で、内定辞退をするケースが後を絶たないためです。