機能性とサステナビリティを両立、三菱ケミカルが生み出した新素材「BENEBiOL™(ベネビオール)」
合成皮革や人工皮革、シューズのソールをはじめ、塗料やコーティング剤まで幅広く使用されている素材「ポリウレタン樹脂」。耐久性や耐薬品性をはじめとする機能の向上が求められていたことに加え、石油由来であったことから、サステナビリティの観点で課題があった。
そのなかで、三菱ケミカルグループが世界初となる植物由来ポリカーボネートジオール(以下、PCD)「BENEBiOL™(ベネビオール)」を開発し、近年さまざまな分野で導入が進んでいる。 PCDはポリウレタン樹脂の主原料のひとつで、BENEBiOL™は植物由来であることからサステナブルということ以外にも、従来の石油由来PCDでは実現できなかった高い機能を付与することも可能になったという。 具体的には、BENEBiOL™は最大92%のバイオ化度を有するとともに、耐久性や耐薬品性などが向上したほか、柔軟性という弱点も克服しているとのことだ。 そこで今回、三菱ケミカル株式会社BENEBiOLグループの金森芳和さんと飯塚耕平さんに、BENEBiOL™の特徴、製品としての展開、今後の可能性などについて伺った。
これまでの弱点を克服したサステナブルな素材
ーはじめに、石油由来のPCDではなく、植物由来のPCDを開発しようと考えた経緯について教えてください。 金森: これまでポリウレタンを扱う企業から、さまざまなご要望をいただいていたなかで、特に弱点であった「耐久性」と「柔軟性」の向上に関する声が多くありました。 そこで、要望に応えるために、「どのような化学構造を持てばいいのか」などの検討を繰り返した結果、植物由来の原料を用いたPCDが、従来の石油由来PCDと比べて高い機能性があることを見出して、BENEBiOL™の研究開発に取り組み、販売を実現しました。 結果としてサステナブルな素材となったのですが、機能を追求するなかで植物由来の原料にたどり着きました。
ーBENEBiOL™は、具体的にどんな素材から作られているのでしょうか。 金森: たとえば、トウゴマ(ヒマ)から取れる「ひまし油」をもとに得られる素材を原料のひとつとして選定しています。こうした植物由来原料と、石油由来原料を活用して製造されるものが、BENEBiOL™になります。 現在、BENEBiOL™に含まれる植物由来原料の割合でいうと、約20%から92%まで幅広くラインナップしており、またグレードによって使用する原料が異なっています。お客様には、製品やそこで解決したい課題に応じて、より適した組成を提供することができます。 飯塚: 現時点では100%植物由来という形にはなっていないのですが、たとえば製品が最終的に焼却処分される際、大気中にCO2が排出されたとしてもその一部を植物が吸収し、またBENEBiOL™の原料として活用されることになります。 さらに、耐久性の向上により、長く製品を使っていただけるという観点でも、サステナブルであると言えます。