なぜ総合格闘家・石井慧のボクシングデビュー戦は2-0判定の不完全燃焼に終わったのか…ボクサーとしての実力は?
北京五輪の柔道100キロ超級金メダリストで総合格闘家として活躍している石井慧(35、クロアチア)が14日、エディオンアリーナ大阪で行われたヘビー級4回戦でプロボクシングデビュー。パワーとスタミナを生かしてコーナーへと押し込むインファイトでプロ1戦1勝(1KO)の高山秀峰(30、スパイダー根本)に2―0の判定勝ちを収めた。ジャッジの1人がドローをつける接戦でKOデビューとはいかず、試合前には日本ヘビー級王座のベルトを衝撃の69秒TKOで獲得した但馬ブランドン・ミツロ(27、KWORLD3)へ挑戦状を叩きつけていたが「踏み台にもならない」とトーンダウン。それでも今後のボクシング活動の継続を宣言した「サトシ・イシイ」のボクサーとしての実力とは?
パワーを生かしたインファイトに活路
クロアチア国籍の「サトシ・イシイ」として挑んだ異色のボクシングデビュー戦は、不完全燃焼に終わった。 ジャッジの1人が「40-36」のフルマークを付けたが、もう1人は「38-38」のドロー。3人目が「39-37」とつけたため、なんとか2-0判定で勝利した。だが、KO決着が必至であるはずのヘビー級戦で、しかも相手はボクシング界での“初級”にあたるわずか1戦の4回戦ボーイ高山だったのに、KOシーンどころか、ダウンシーンも演出できずのいわゆる“塩試合“。 「やっぱり餅は餅屋。想像していた通り難しい部分があった。デビュー戦ですけど全然ダメ」 インタビュースペースに現れた石井は白星デビューの安堵感と、納得のいかない試合内容に複雑な笑顔を浮かべた。 「判定決着にになって、石井イコール判定が消えていない。今みたいな試合では、青木真也をふりむかせられない」 辛口の総合格闘家の青木真也を引き合いに出して自虐的に“塩試合”となったことを悔やんだ。 第1ラウンドのゴングが鳴ると、サウスポースタイルの石井は、ややクラウチングスタイルでガードを固めてジリジリとプレスをかけた。3年前にボクシングを始めたばかりだが、昨年11月にKOデビューした高山は、足を使い、そのガードの上から軽快なパンチを浴びせた。 「ファーストコンタクトの印象は。110キロの体重と筋肉とスピードは想定通り。パンチも見えた。想定内のパンチ力でKOで負けるのはないな」と感じたという。 ラウンドの終了間際だ。ロープにつめた石井は、左のボディからフックのコンビネーションブローをヒットさせたが、その打ち終わりに高山のカウンターの右フックを浴び、一瞬、ぐらついた。 「(4月に)K-1で日本人のハードパンチャーと言われる人(実方宏介)とやって、そのパンチくらいかなと思っていたが、高山君が全然強くて、最初びっくりした。足にもきた。ボクサーのパンチは違うんだなと」 2ラウンドも高山がステップワークとスピードで石井のプレスに対抗するという展開が続いたが、3ラウンドに入ると、石井が、そのブルドーザークラスの突進力のギアを入れた。 110キロの熊のような肉体で、ロープ、コーナーに高山を押し込んで、釘づけにして左フック、ボディ、アッパー、右のストレートなどを連打で叩き込む超インファイト戦法に切り替えたのである。