<リオ五輪予選>豪州に見抜かれていたマンネリ化のなでしこ戦術
前半アディショナルタイムに1点を返したFW大儀見優季(フランクフルト)は、前半の途中までは前線で孤立感を覚えていたと、試合後の取材エリアで打ち明けている。 「ボール保持者に対するサポートが遅く、ボールを奪われている場面が何回かあった。自分のところにも、もうちょっと早くサポートにきてほしいというのはあった。こういう緊張感のあるゲームだからこそ、もっとリスクを冒して、ボール保持者を追い越して、前に人数をかけていかないとゴールは生まれづらい。そこはチームとして取り組んでいかないといけない」 人とボールが連動して動きながら、全員が数手先までのイメージを共有しなければ、フィジカルで劣る日本が長年にわたって積み上げてきたスタイルは機能不全に陥ってしまう。 短期決戦の初戦。相手は高さとフィジカルの強さを前面に押し出してくる難敵。ホームが舞台だからこそ逆に負けられない。ナーバスになる条件がそろっているからこそ、プレッシャーをはねのけ、仲間を背中で鼓舞する存在が必要だった。 澤さんの象徴だった背番号「10」を継承した大儀見は、最前線で体を張ることがメインの仕事になる。引き続きキャプテンを務める宮間は、ピッチ内外における精神的支柱と代表では不得手としてきたボランチを含めて、現時点ですでに背負うべき役割が多すぎる。 現役時代に「苦しいときは私の背中を見て」なる名言を残し、ベンチでスタンバイしているだけでも影響力を与えた澤さんの存在が、あまりに大きかったがゆえの弊害なのか。 「負けたことを引きずらないことが一番大事。もう4連勝するしか道がないので、自分たちがやってきたことを信じていく。やってきたことが間違っていたから負けたわけではないと、思っているので」 中1日で迎える3月2日の韓国戦へ、宮間は努めて前を向いた。下を向いている時間はないが、初戦で喫した完敗の原因が佐々木監督の安定性重視のチーム作りと、澤さんの不在に起因しているとしたら。短時間で状況を立て直すのは難しいかもしれない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)