俳優・高橋文哉の「察する力」その原点は、男三兄弟の上下関係?「兄に怒られないよう…」
「CREA」2024年夏号の「猫のいる毎日は。」特集より一部を抜粋し、掲載します。 【画像】高橋文哉さんの写真をすべて見る ピュアな恋愛が似合うその人は、真っ直ぐな目でこう言った。「人に喜んでほしいんです」。誰かのために、尽くせてしまう人。 なぜそこまで。その原点は――。
監督のつくる画のなかで、どれだけ暴れられるか
「今日は全部フィルムですか?」 顔見知りのカメラマンに気さくに話しかける高橋文哉さん。夜の撮影だというのに、疲れも見せず人懐っこい笑顔で現場を明るく照らす。3月には日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、快進撃が止まらない。最新作の映画『からかい上手の高木さん』では、これまで見せたことのないような一面を披露している。メガホンを取ったのは、恋愛の機微を繊細に描いてきた今泉力哉監督だ。 「今泉監督のつくる画のなかで、どれだけ暴れられるかが大事だなと思いながらやっていました」 永野芽郁さん演じる中学の同級生の高木さんに、からかわれる中学校の体育教師・西片役。ドキッとしたりビクッとしたり、リアクションが肝となる作品だ。 「高木さんに不意にからかわれても、ちゃんと返せるように常に意識していました。撮影に入る前は、家で数秒後に音の鳴る機械をセッティングして、鏡を見ながらどのくらいのテンションが自然に見えるか試してみたり。でも、初めてのリハーサルでは、自分でも想像しなかったような大きな声が出てしまってそれに驚きました(笑)」
役のオン・オフはつくらないタイプ
撮影はすべて小豆島で行われた。眩いほど美しい海、空、木々。豊かな自然の風景が、登場人物たちの言葉にならない揺れる思いを鮮やかに彩る。高橋さんは島の空気感を体に染み込ませるため、どこへ行くにも自転車で島を巡った。 「もともと役のオン・オフをつくらないほうなのですが、無意識に役の仕草がプライベートでも出てしまうこともあるみたいです。島にいる間はもしかしたら、僕のリアクションも大きめになっていたかもしれないですね」 本作では高木さんと西片の物語と並行して、西片の教え子の中学生の淡い恋模様も綴られている。ちなみに高橋さんの中学時代はどんな感じだったのだろう。 「バレーボール一色でした」 ふたりの兄の影響で6歳からバレーボールを始め、中学3年生のときにはキャプテンも務めた。さぞかしモテたでしょう? と水を向けると「そうですね(笑)」とさらりと認めてくれた。 「ドラマに出てくるようなレベルではないですよ? 廊下を歩いていたら、教室から『文哉先輩! 』と声をかけられるくらいです。いま思い返しても最高でした!」 同性異性関係なく、みんなに好かれそうなタイプ。漏れ聞くところ、かなりの友達思いでもある。芸能界の友達も増えたが、忙しくなったいまも、休みが決まると真っ先に連絡するのは地元の友。自宅に招くことも多く、前夜に部屋の模様替えをしたりするそうだ。 「『また変わってる! 』と友達が驚いてくれるのが嬉しいんです」