東海林さだお85歳「脳梗塞になりながら片目で原稿を描き上げて。入院中一番辛かったのは、塩気のない魚一切れ、小鉢、ご飯の質素な食事」
◆71歳の時に草野球を引退 今年も漫画家の訃報が続いていますし、この業界、若くして亡くなる人が多い気がします。漫画家は徹夜続きで不健康な職業というイメージが強いかもしれませんが、僕の場合は徹夜なんてとんでもない。 平日は仕事場にしている都内のマンションに寝泊まりし、朝10時からだいたい夕方6時まで、残業なしの8時間労働です。病気知らずで、2度の入院以外はまったくもって健康体。風邪もあまり引いたことがありません。 健康の一番の秘訣は、長年続けた草野球にあったのかもしれないな。小さい頃から野球が大好きで、漫画家になってからも3つの草野球チームを掛け持ちしていました。多い時は年間50試合に出ていましたし、プロ並みにグアム島合宿なんかしたりして。野球のために、仕事場にトレーニングマシンを置いて筋トレにも励んでた。 ところがある時、負荷のかけ過ぎで腰を痛めてしまって、71歳の時に草野球は引退。以降は仕事のない週末に、自宅の近所を1時間ほど歩くようにしてきました。
食生活はちょっと変則的で、しっかり食べるのは夕飯だけ。朝や昼は食べたくないし、食べると仕事にならない。食事をして胃に血液が集中すると、脳に回る分が減るでしょう。頭がうまく働かなければ漫画は描けなくなっちゃうから、僕は何十年も一日一食スタイル。 仕事の前には、コンビニで売っているカフェイン飲料を一本飲みます。さすがにそれだけだと胃が荒れるから、事前に牛乳やヨーグルト、茹で卵やチーズなんかを摂っておく。それで夕方まで仕事をしたら、平日は自分で用意した夕食を食べます。 料理は好きなので以前は自炊もしていたけれど、最近はコンビニでお惣菜を買って、パックご飯をチンして食べることが多いですね。 週末は自宅に帰って、妻が用意してくれる夕食を食べます。昔も今も変わらず、酒の肴みたいなおかずを何品か。 2~3年前までは、週の半分くらいは仕事終わりに飲みに行ってました。人とわいわい飲み食いするのが好きだから、いろんな趣向で宴会を開いたりね。 本格的な江戸前寿司をふるまうために、柳刃包丁からネタを入れるガラスケース、それに提灯まで揃えて、友だちの家で出張寿司屋を開いたこともあったなあ。 一日一食とはいえ、かなりの年齢まで好き勝手に飲んだり食べたりしてきたから、肝細胞がんはその結果といえるのかもしれないね。 (構成=山田真理、撮影=大河内 禎)
東海林さだお
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