「赤旗砲」スクープの裏側 与党過半数割れに影響した「裏金問題」「2千万円問題」が放てたワケ
先の衆院選で、自民党に大打撃を与えた「裏金」と「2千万円支給」問題。スクープしたのは共産党の機関紙「赤旗」。スクープは、どのようにして生まれたのか。AERA 2024年12月2日号より。 【写真】「日刊紙の編集責任を負う 赤旗編集局次長の藤田健さん」はこちら * * * きっかけは、2021年12月。自民党の国交族議員が都内で開いた政治資金パーティーの実態を探りに行った取材だった。笹川神由(かみゆ、33)は、違和感を覚えた。 「参加者は1人2万円の会費を払っていましたが、食事も飲み物も手土産もないまま、議員の話を聞いて終わりました」 先の衆院選で、自民党を大敗に追い込むきっかけとなった「裏金問題」をスクープした「しんぶん赤旗日曜版」の記者だ。 政治資金パーティーは「対価を徴収して行われる催物」と政治資金規正法に明記されている。だが、このパーティーに対価性は「全くなかった」(笹川)。 高校卒業後の約4年間、運送会社で2トントラックのドライバーをしていた笹川は、中小企業がお金を稼ぐ大変さを知っていた。しかも21年当時、コロナ禍で多くの人が生活に苦しんでいた。そんな中、「政治家だけぼろ儲けしているのはおかしい」と感じた。 「他にも同じことをやっている議員はいないか、調べることにしました」 ■「他の議員もやっている」仮定に立って横展開 やがて、電気技術者らでつくる「全友会」という政治団体の収支報告書の記載に疑問を抱いた。報告書には安倍派から計36万円分、麻生派から計40万円分のパーティー券を購入したと書かれていた。だが、両派閥の収支報告書にはその記載がない。政治資金規正法では、20万円超のパーティー券の購入者名を報告書に記載する義務があり、不記載は違法行為だ。 記事を手掛けたデスクの山田健介(51)は、言う。 「自民党議員の疑惑を見つけた際、一人の議員に限られるケースもありますが、自民党内で共有され組織的に発展するケースが少なくありません。他の議員もやっている可能性が高いという仮定に立ち、横展開しました」 実は、19年秋に浮上した安倍晋三元首相が公的行事を私物化していた「桜を見る会」を巡る疑惑をスクープしたのも、山田や笹川らだった。この時は、山田がツイッター(今のX)に桜を見る会について「血税大盤振る舞い」と投稿されていたのを見つけ、笹川が中心となって横展開で調査。安倍元首相だけでなく、萩生田光一文部科学相(当時)ら他の国会議員の後援会員もこぞって参加していたことが判明した。