「赤旗砲」スクープの裏側 与党過半数割れに影響した「裏金問題」「2千万円問題」が放てたワケ
今回も、全友会以外に不記載の団体があるはずと考えた山田は、横展開して他の政治団体の収支報告書を調べるよう笹川に指示した。だが、政治団体は全国に約6万もある。しかも、提出先は複数の県にまたがって活動する場合は総務大臣、単一の時は各都道府県の選挙管理委員会とバラバラ。さらに、公開されている報告書はPDF。ファイルを一つ一つ開いて目視で確認しなければいけないなど、気が遠くなる地道な作業だ。笹川は言う。 「調べていく途中で、お金を持っているのは日本歯科医師連盟など全国組織の本部や、大都市に本部がある団体に多いことに気づきました」 ■「裏金問題」をスクープ、やがて与党は過半数割れに そこで総務省、都と大阪の両選管、この3カ所に絞り政治資金収支報告書を確認していった。こうして22年11月6日号の日曜版に、「パー券収入 脱法的隠ぺい2500万円分 不記載 岸田派など主要5派閥」の記事を掲載。これがやがて裏金問題として岸田文雄首相の退陣、そして、衆院選での自公の過半数割れに繋がった。世紀のスクープだが、笹川は冷静に振り返る。 「衆院選で有権者が怒ったからこそ、自公が過半数割れを起こしたと思います。その判断材料を提供できたのは、よかったです」 しんぶん赤旗、通称「赤旗」。言うまでもなく日本共産党の機関紙だが、今や赤旗が放つスクープは「赤旗砲」と呼ばれ、政界を揺るがすまでの存在となっている。一体どのような新聞なのか。 赤旗編集局次長の藤田健(たけし、64)によると、編集局には政治部、社会部、日曜版編集部、写真部、広告部、校閲部など計22の部署がある。全国に五つの総局があり、北京、ベルリン、ワシントンDCなど海外5都市に特派員を置く。編集局に所属する人は全て「記者」と呼び、現在約280人。記者になる条件はただ一つ。共産党員であること。 現在、日刊紙(月額3497円)、日曜版(同990円)、電子版(同3497円)を発行し、部数は計約85万部。日曜版はタブロイド版で、調査報道に力を入れている。藤田は言う。 「赤旗のスタンスは、反戦平和を貫き、真実を追求するジャーナリズム。その上で、他の政党機関紙と違い、スポーツや芸能、全てをフォローしています。特に災害報道には力を入れ、国民の苦難に寄り添う立場を取っています」 それにしても、大手メディアに比べ人も資金も少ない赤旗がこれだけスクープを放てるのはなぜか。藤田は「タブーがないからだ」と力を込める。例えば、大手メディアが日米同盟を容認したり、消費税増税を財界と一体で求めてきた中、赤旗は「日米安保タブー」も「消費税タブー」も一切なく、批判をしてきたと言う。 「赤旗の歴史はタブーへの挑戦だ」