朝6時から行列「パチンコ天国」で「ギャンブル」しない人たち
震災後に始まった朝7時開店
石巻でもひと昔前までは9時開店が一般的だった。「マルハン」の店員は、「石巻はパチンコの競争が激しい場所で、8時半、8時と少しずつ開店時間が早くなっていったようです」と話す。 朝7時開店は、東日本大震災後の2011年11月、漁港エリアの「アムズガーデン」が土日限定で始めた。担当者によると、「漁師や漁港関係の方から、『時間を持て余してしまうので、もっと早くから開けられないか』というお話があったと聞いています」。 この店をはじめ、漁港エリアでは朝早い時間でも、つなぎや作業服を着た客の姿を見ることができる。朝8時、会社の車で乗り付けた作業着の4人組は、関西から単身赴任中。仕事が終わったばかりで、「寝る間も惜しんできました」と言うや、足早に店内に入っていった。「この辺りは津波の被害が特にひどかった。パチンコ屋のお客は、復興支援や現場関係の人も多いみたいですね。県外の人だから行く当てもないんでしょう」とは、タクシーの運転手の弁。 一方、2012年12月、漁港エリア以外で初めて7時開店を決めた「マルハン」は、高齢者を中心に開店時間を早めてほしいという要望があったそうだ。実際、マルハンに限らず、どの店舗でも高齢者の姿が目立つ。ある店で、休憩所に座っていた70代の男性に声をかけた。この店にはよく来られるんですか? 「ここはダメだぁ。全然勝てねえよ」。そうは言うものの、一向に席を立つ気配がない。男性は再び、店に置いてある地元新聞に目を落とした。シートには、同じくらいの年代の男性が10人ほど座っている。別の店では、70代の女性がおどけた口調でこう言った。「店が全然勝たせてくれないけど、『依存症』だから週に1回は来ちゃうのよ。婆ちゃんだから、誰も遊んでくれないの」。 「仮設住宅に一人でいると、津波のことを思い出して怖い」――高齢者の移動支援を行う男性は、複数の高齢者からこんな声を聞いている。「この辺りじゃ、気晴らしもないですからね。パチンコ以外だと、カラオケか居酒屋か温泉。パチンコって言うと周りの人から怒られるんで、こっそり送り迎えしていました。1日いくらかで、いろんなことを忘れられるならいいじゃないですかね」。