〈物流2024年問題〉物流コストの上昇は本当に物価高騰の主要因なのか?
物流の「2024年問題」に突入して1カ月が経過した。その前後から物価の高騰の主要因のひとつとして、物流コストの上昇を取り上げる報道が目立つようになっていると思われる。 例えば、「総合エネルギー企業大手、15~25%値上げ、物流コスト増で」、「飲料製造・販売大手、値上げ、物流費高騰も影響 - 小売店の実質店頭価格は、20~30%程度上昇する見込み」、「乳製品メーカー大手、6月1日出荷分より一部飲料を値上げ(価格改定率8.3%)、物流費上昇も影響」などである。 物流コストが売上高に占める割合は企業により異なるものであり、恐らくはこれら特定の企業の物流コストは、売上高を二桁の割合で値上げしなければならないほど上昇したことは事実なのかも知れない。しかしながら、このような報道は、現在世の中で顕在化している物価高騰の主たる要因が、「2024年問題」に端を発する物流コストの上昇にあるという認識を、一方的に消費者にインプットしてしまっているのではないだろうか。本当に、物流コストの上昇は、一般的に物価高騰の主たる要因と考えて良いのだろうか。 そのような疑問を念頭に今回は、さまざまなデータをもとに“物流コスト上昇”の実態に迫ってみたいと考える。
「NX総研短観」から見るトラック運賃指数
NX総合研究所では、企業物流の最新動向を把握することを目的に、四半期ごとに製造業、卸売業の主要2500事業所を対象に業況判断指数(DI、Diffusion Index)調査を行い、700~800社から回収した回答をもとに「企業物流短期動向調査」(NX総研短観)として、以下のコンテンツを発表している: (1) 国内向け出荷動向 (2) 輸送機関別利用動向 (3) 輸出入貨物の動向 (4) 在庫量と営業倉庫利用の動向 (5) 運賃・料金の動向 (6) 物流コスト割合の動向 上記の(5)のうち19年1~3月から24年1~3月の間のトラック運賃指数の動向を追ってみたところ、下図の通りとなった。 調査対象の各事業所には、過去3カ月間のトラック運賃が値上がりしたのか、値下がりしたのか、現状維持だったのか、向こう3カ月に値上がると予想するか、値下がると予想するか、現状維持と予想するかを回答してもらい、値上がりと回答した事業所の割合(%)と値下がりと回答した事業所の割合(%)を差し引きした数値がトラック運賃指数である。 上図を見る限り、ドライバー不足等を背景に元々明確な値上がり傾向を示していたトラック運賃は、新型コロナウィルスの感染拡大により一旦その傾向が鈍化したものの、21年に入ってからは再び明確な値上がり傾向に転じている。これを見る限り、トラック運賃を中心とする物流コストが値上がり傾向にあることは事実のようである。 しかしながら、「NX総研短観」は、景気ウォッチャー調査と同様にDI調査であり、傾向を示すことはできても、その傾向の大きさを、例えばトラック運賃が何パーセントくらい値上がりしているのかを示すことはできない。