「神降臨」ブロック、主将との名物ルーティン…「出し切れました」久光スプリングス退団、25歳ミドルの旅立ち【Vリーグ女子】
「ハマが最初に声をかけてくれました」
代名詞の「パワー」が際立つコートを離れれば、違う一面ものぞかせる。誰もが口をそろえる濵松の人懐っこさ。キャプテンの大竹里歩(30)は親しみを込めて「コミュニケーションおばけ」と呼ぶ。21年にデンソーから久光に移籍した大竹は、合流初日のことを忘れない。「ハマ(濵松の愛称)が最初に声をかけてくれました。練習の流れや、やり方など右も左も分からず、不安でいっぱいだったので、本当にありがたくて、心強かったのを覚えています」と感謝する。この「ファインプレー」から心を通わせ始めた2人の関係は、いつしか試合開始直前にベンチ前でジャンプして体をぶつけ合う、スプリングスの名物ルーティンにまで発展した。 23年夏に右足を手術した濵松は、入院生活やリハビリを続ける日々の中で「これからの自分を見つめる時間が多くて、いろいろと考えるようになった」と明かす。自問自答を繰り返した末、今季のリーグ終盤に退団を決断した。「きつかったことの方が多かったですが、久光が嫌いになったわけではありません」。心の整理をつける意味でも、一度真っさらな状態にしたかった。「常に100%、真心で応えてくださるので、何でも相談できるんです」と信頼する大竹にも伝えた。「ハマの人生なんだから、どんな選択をしても、私は応援するよ」。いつもと変わらず、うなずきながら耳を傾ける大竹の心遣いが身に染みた。
「最後」の試合でチーム最多得点
黒鷲旗大会ではジャンプして体をぶつけ合った後、お互いの気持ちを確かめるように抱き合ってから試合に臨んだ。結果的に最後の「儀式」となったデンソーエアリービーズとの準決勝。濵松は力を振り絞って戦った。トータル19得点(アタック16、ブロック2、サーブ1)は中川美柚(24)に並ぶチーム最多だった。「トスは自分から呼んでいましたが、ここまで求められたり、託されたりしたのは初めてでした。みんなのおかげです」。悔いなき花道。そんな「相棒」をいたわるように、そして新たな旅立ちへエールを送るように…。心優しきキャプテンの腕がコートを後にする背番号「4」の左肩へ、そっと伸びた。 (西口憲一)
西日本新聞社