分解されないから、永遠に残る化学物質「PFAS(ピーファス)」は、なにが怖い?
行政が取り組むべきこととして声を上げることが重要
――PFAS問題を解決するため、一人一人ができることはどんなことでしょうか。 原田:個人の生活を守るためにできることとしては、水道の汚染状況を知る、東京都などに設置されたPFAS汚染の相談窓口を利用する、浄水方法の改善を訴える、PFAS濃度が比較的高い地域では個人ごとに浄水器を設置するなどの対策があります。 直接的な対策を個人で行うというのは難しいのですが、PFOS、PFOAについて行政や政治がしっかり取り組むべき課題だということを、国民として示す必要はあると思います。 また、2024年6月からPFASの中のPFHxS(ピーエフヘクスエス:ペルフルオロヘキサンスルホン酸)に対しても新規製造などの規制が厳しくなりました。消費者としては、PFAS自体が使われていないPFASフリー製品を選ぶということも重要かと思います。 PFASを使わない選択をしている企業も段々と広がってきています。そういった企業の製品を選び、企業の取り組みを後押しすることも大切です。
編集後記
PFASは環境中にも、体内にも長く蓄積される特性があり、環境汚染も、健康被害についてもまだ完全には明らかになっていません。今後もっと事態が深刻化する可能性もある点が非常に怖いと感じました。 自分の暮らす地域でどのような対策が取られているのか目を光らせ、疑問があれば声を挙げていく必要がありそうです。 原田さんは各地の市民団体と協力しながら、今も汚染の調査や研究に取り組んでいるとのことです。今回の取材で「PFAS問題はまだ始まったばかり」という原田さんの言葉がとても印象的でした。
<プロフィール>
原田浩二(はらだ・こうじ) 京都大学大学院医学研究科准教授。専門は環境衛生学。京都大学大学院医学研究科助教、講師を経て2009年から現職。2002年に京都大学で小泉昭夫(こいずみ・あきお)教授(現・名誉教授)の調査チームの一員として、PFAS汚染の調査に取り組み、近年は国内各地の市民団体と協力しながら、調査・研究に力を入れている。 ※掲載情報は記事作成当時のものとなります。
日本財団ジャーナル編集部