なぜカワサキSS350マッハⅡは、“ジャジャ馬”の異名をもつのか? 今乗っても刺激的な2ストロークマシンに迫る
「曲がらない、止まらない、まっすぐ走らない」
カワニシ:今回試乗するのは1971年式のカワサキ350SSです。空冷2ストローク3気筒エンジンを積んだ、通称「MACH(マッハ)シリーズ」と呼ばれる名車ですね。1969 年に登場して人気を博した500SS、通称「マッハⅢ(スリー)」の後、その小型版として1971年に登場した350SSは「マッハⅡ(ツー)」と呼ばれています。 佐藤:マッハといえば、伝説のバイクですよね。実は僕のアーティストの先輩がマッハの後継モデル「KH(通称ケッチ)」に乗っているんです。一緒に走ったことがあるんですが、“バーン!”ってエンジンが爆発するような音がするし、マフラーからは盛大に白煙を吐いてるし、なのにいつの間にかずっと先に行っているぐらい加速がすごいので、驚きました。 カワニシ:60、70年代は、軽くて、パワーも出しやすい2ストロークエンジンが、多くのスポーツバイクに搭載されていました。なかでもマッハシリーズは“ジャジャ馬”と呼ばれて、とくに500ccのマッハ3は「曲がらない、止まらない、まっすぐ走らない」とも言われていたようです。この350SSも最高出力45馬力と、当時の400ccクラスではダントツのパワーでした。 佐藤:先輩が乗っていた“ケッチ”の印象とか、マッハもYouTubeで見ていたんですけど、“乗りこなすのは大変”というイメージがあって、正直、かなりビビってます(笑)。2ストのバイクに乗るのは初めてだし、そもそもキックスタートでエンジンかけられるのかな……とか。 カワニシ:当時の2ストバイクは、ラフに扱われて調子を崩しているものも多かったから「乗りにくい」というイメージが定着したんでしょうね。この350SSはちゃんと整備されているし、気を付けて乗れば心配ないと思いますよ。
2ストロークのジェット加速を味わってみたい
佐藤:実際に乗ってみると、楽しいですね! キックレバーを踏み下ろして、エンジンが“ブローン!”と、一発でかかったときは、思わず「ウェーイ!」と、テンションが上がりました。もっと暴れん坊なイメージだったけど、制御が効かないって訳ではないし、思っていたよりずっと乗りやすかった。もっと時間があったら、もう少しアクセル開けてみたかったな。あとカワニシさんに前を走ってもらって後から付いていったとき、煙がモクモクでオイルの匂いがサイコーでした(笑)。 カワニシ:一緒に伴走したけど、運転とても上手でしたよ。一般道を走ったので、エンジンを思い切り回してもらえなかったのがちょっと残念でしたね。2ストエンジンの特徴で、回転を上げていってパワーバンドに入ると、キュイーン!と猛烈な加速が味わえるんです。あれが2ストの醍醐味なんですが。 佐藤:そうなんです!もうちょっとスピード出したかったな。噂に聞く、2ストのジェット加速を体感してみたかったですね。でも、2ストを乗りこなすにはもっと修行が必要ですね。今回は初めてだったし、試乗できただけで十分です。 カワニシ:350SSは普通二輪(中型)免許で乗れるし、車体もコンパクトで軽いから人気があるんです。50代、60代のベテランライダーの中には、カワサキ「Z1」やホンダ「CB750」のような大型4ストバイクは重たくて大変だと、この350SSに乗り換える人もいるようです。近ごろは価格も上がっていて、程度にもよるけど、200万円台後半から400万円近くするものもありますね。 佐藤:高い! とは思うけど、それだけの価値は感じますね。この企画を通じて絶版旧車の魅力をもっと知ったら、本当に欲しくなっちゃいそうで、楽しみだけど怖いです(笑)
【プロフィール】佐藤友祐(さとうゆうすけ)
96年6月11日生まれ、北海道札幌市出身。男女混成ダンス&ヴォーカルグループ「lol(エルオーエル)」所属。「avex audition MAX 2013」でアクター部門グランプリを受賞。lol加入後は、アーティスト活動だけでなく、俳優やモデルとしてもマルチに活躍中。 文・河西啓介 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・堀直樹 ヘア&メイク・山田佳苗 編集・稲垣邦康(GQ) 取材協力・UEMATSU