“アニメ総集編”の劇場版『ぼっち・ざ・ろっく!』が全国映画動員ランキングで1位を獲得したワケ
アニメ視聴組だからこそ楽しめること
やはり総集編のため、アニメ版を見ていない人のほうが満足できそうではあるが、そういうわけでもない。アニメ版視聴組だからこその感動も多い。アニメ版は4コマ漫画が原作のアニメらしく、どこかゆるさがありながら話数が進む。一方、劇場版はアニメ版と異なり、ゆるさはほどほどに、脇道にそれることも少なく、「ぼっちはなぜバンドをやっているのか」という軸をより際立たせていたように思う。 劇場版の冒頭ではいきなり、アニメ版5話で虹夏がぼっちになぜバンドをしているのかを聞くシーンから始まる。この虹夏の問いかけが初っ端にあったからこそ、作詞に悩む姿、廣井きくりからの「敵を見誤るなよ?」という言葉の意味を理解しようとする姿など、ぼっちの葛藤が強く感じられた。また、台風の日のライブでバンドをやる意味を見い出し、“ギターヒーロー”となって思い通りの力を出せないメンバーを救う姿は、アニメ版でも感動的なシーンだったことは言うまでもない。それでも、劇場版ではアニメ版よりもぼっちの成長、さらにはそのカッコ良さに一段と胸を打たれるシーンになっていた。 シーン自体は変わっていないものの、見せ方ひとつでここまで受け取り方を変えてしまう制作陣の手腕に驚愕。アニメ版を見ていたからこその感動を覚え、アニメ版を見た人にこそオススメしたくなった。言わずもがなではあるが、大音量で結束バンドの曲を聞けることが何よりの魅力である。「どうせアニメでやったやつでしょ?」とは言わずに興味があればぜひ見てほしい。
望月 悠木